以下の国際的な流れに従い、各分野の専門家のご指導のもと、2016年1月から順次新体系表記のラベルを出荷しています。
※科が変更された属のうち、ラベルの注文頻度が比較的高いもの。
属名 | 変更後(APGⅢによる科名) | 変更前(従来の分類法での科名) |
---|---|---|
アオキ | アオキ科 | ミズキ科 |
アオギリ | アオイ科 | アオギリ科 |
アジサイ | アジサイ科 | ユキノシタ科 |
アロエ | ススキノキ科 | ユリ科 |
イイギリ | ヤナギ科 | イイギリ科 |
イトラン | キジカクシ科 | リュウゼツラン科 |
イヌガヤ | イチイ科 | イヌガヤ科 |
ウツギ | アジサイ科 | ユキノシタ科 |
エノキ | アサ科 | ニレ科 |
エンレイソウ | シュロソウ科 | ユリ科 |
オミナエシ | スイカズラ科 | オミナエシ科 |
オモト | キジカクシ科 | ユリ科 |
オリヅルラン | キジカクシ科 | ユリ科 |
カエデ | ムクロジ科 | カエデ科 |
ガマズミ | レンプクソウ科 | スイカズラ科 |
キチジョウソウ | キジカクシ科 | ユリ科 |
ギボウシ | キジカクシ科 | ユリ科 |
キリ | キリ科 | ゴマノハグサ科 |
クサギ | シソ科 | クマツヅラ科 |
コウヤマキ | コウヤマキ科 | スギ科 |
コウヨウザン | ヒノキ科 | スギ科 |
ゴクラクチョウカ | ゴクラクチョウカ科 | バショウ科 |
サカキ | ペンタフィラクス科 (モッコク科、サカキ科) |
ツバキ科 |
ザクロ | ミソハギ科 | ザクロ科 |
シオデ | サルトリイバラ科 | ユリ科 |
シナノキ | アオイ科 | シナノキ科 |
ジャノヒゲ | キジカクシ科 | ユリ科 |
ショウジョウバカマ | シュロソウ科 | ユリ科 |
ショウブ | ショウブ科 | サトイモ科 |
スイショウ | ヒノキ科 | スギ科 |
スギ | ヒノキ科 | スギ科 |
スグリ | スグリ科 | ユキノシタ科 |
スズラン | キジカクシ科 | ユリ科 |
セコイア | ヒノキ科 | スギ科 |
センネンボク | キジカクシ科 | リュウゼツラン科 |
トチノキ | ムクロジ科 | トチノキ科 |
ナギイカダ | キジカクシ科 | ユリ科 |
ナルコユリ | キジカクシ科 | ユリ科 |
ニワトコ | レンプクソウ科 | スイカズラ科 |
ネギ | ヒガンバナ科 | ユリ科 |
ハナイカダ | ハナイカダ科 | ミズキ科 |
ハナニラ | ヒガンバナ科 | ユリ科 |
ハマゴウ | シソ科 | クマツヅラ科 |
ハラン | キジカクシ科 | ユリ科 |
ヒアシンス | キジカクシ科 | ユリ科 |
ヒサカキ | ペンタフィラクス科 (モッコク科、サカキ科) |
ツバキ科 |
フォルミウム | ススキノキ科 | リュウゼツラン科 |
ホウキギ | ヒユ科 | アカザ科 |
マツムシソウ | スイカズラ科 | マツムシソウ科 |
ムクノキ | アサ科 | ニレ科 |
ムスカリ | キジカクシ科 | ユリ科 |
ムラサキクンシラン | ヒガンバナ科 | ユリ科 |
ムラサキシキブ | シソ科 | クマツヅラ科 |
メタセコイア | ヒノキ科 | スギ科 |
モッコク | ペンタフィラクス科 (モッコク科、サカキ科) |
ツバキ科 |
ヤブコウジ | サクラソウ科 | ヤブコウジ科 |
ヤブラン | キジカクシ科 | ユリ科 |
ラクウショウ | ヒノキ科 | スギ科 |
リュウケツジュ | キジカクシ科 | リュウゼツラン科 |
リュウゼツラン | キジカクシ科 | リュウゼツラン科 |
ワスレグサ | ススキノキ科 | ユリ科 |
以下の国際的な流れに従い、各分野の専門家のご指導のもと、順次新体系表記のラベルを出荷しています。 ご理解・ご承知おきのほどお願いいたします。
参照:科が変更された主な属の一覧定番ラベル7000種より 主要350種
最近の図鑑やTV番組をみて、科名の表記が違っている?と気づかれる方もおられるでしょう。例えばアジサイ(ユキノシタ科)→(アジサイ科)といった具合です。なぜ変わったのかというと、陸上植物の9割を占める被子植物において「APG体系(*1)」という新しい分類体系が採用されはじめたことによります。
これまでは「植物を形態や構造に基づいて分類する方法」が採用されてきました。新エングラー体系やクロンキスト体系がそれにあたります。
これに対して、1998 年に公表された体系が「APG体系」です。従来と違うのは「DNA塩基配列に基づいて被子植物の系統関係を解析して分類する方法」であることです。
APG 体系は公表以降、新たな研究成果を反映したものにバージョンアップしています。2016年には 第4 版(APG IV)が公表され、2009年公表の第3版(APG III)とあわせて、ほぼ完成された体系とされています。
現在普及が最も進んでいるのが欧米です。欧米では植物分類学の研究成果はすぐに園芸・造園業界に反映される流れができており、『Plant Finder』などメジャーな園芸関連書籍やサイトでもすでにAPG 体系が浸透しています。
『植物分類表』
2009年Aboc
日本でも、日本植物学会や分類学会をはじめ、大学や園芸造園専門学校などの教育研究機関や造園学会ではすでに採用され、植物学講座ではAPG体系の表記や参考図書が用いられています。日本でこの分類体系が2009年『植物分類表』(アボック社)で初めて本格的に紹介されたのを皮切りに、現在は日本でメジャーな『原色牧野植物大図鑑』(北隆館 2012)、児童向けの図鑑『小学館の図鑑 NEO 花』(小学館 2014)をはじめ、『改訂新版 日本の野生植物』(平凡社 2017)など、ここ数年で一般向けの図鑑やサイトが新たな分類に改訂されました。今後世に出る図鑑や植物サイトではほぼ新たな分類が採用されるとみてよいでしょう。園芸・花壇植物の流通分野においても、NHK『趣味の園芸』をはじめとして広がりをみせています。
このような普及状況を鑑みると、一般にこれから植物を学ぼうとする人たちにとって、あえてマイナーになりつつある旧体系の知識を覚えるのは現実的ではありません。
特に植物園は「植物に接する社会教育の場」と定義され、「教育的配慮のもとに植栽・展示し、知識の普及、知的要求への対応、緑化意識の向上に努めること」が社会的責任であるとされています(*2)。当然「植栽植物の名称表記を適切におこなうこと」が重要な任務であることは言うまでもありません。
このような教育の場である園の植物名ラベルが旧態依然として旧来の分類表示のままになっていると、学生や植物好きの市民、外国人観光客などの混乱を招き信用を欠くことでしょう。
現在多くの植物園は管理運営業務を民間指定管理者へ委託する流れが進んでいます。その結果、植物を知りたい来園者がいても、それに答えられる専門相談員がいないことが課題になっています。
現在このような課題を抱える園は、今が移行のベストタイミングとなるでしょう。専門解説員を常時配置できなくても、ラベル表示をさらに充実させ、国際標準レベルのものに統一してランクアップすることは、来園者やリピーターの満足度を回復する一助となるはずです。
植物を学ぶ次世代のためにも、公共の場から速やかに国際標準となる体系の表記、さらには国際ルールである「命名規約」 に基づいた表記に移行し、全国的に統一普及していく必要があるのです。
*1:APG 体系とは被子植物系統研究グループ:Angiosperm Phylogeny Groupの頭文字をとった名称。被子植物以外の裸子植物やシダ植物なども分子系統学的な研究が進められている。
*2:社団法人日本植物園協会 「植物園の社会的責任」
【2010年3月2日 朝日新聞】