【推薦の言葉】
大場秀章 東京大学名誉教授。CULTA理事長
植物好きにはたまらない本
著者は中国四川省の峨眉山とその周辺地域を主たるフィールドとして二十数年に及ぶ植物の調査をされ、数多くの新種発見や、「幻の植物」の再発見など、植物学へ多大な貢献をされている。この地域の植物を自らの調査経験を通して伝えることのできる植物学者・ボタニカルエクスプローラーとして、著者の荻巣さんの右にでる人は、日本はおろか、世界的にもいないであろう。
先だって荻巣さんに久しぶりにお会いし、色々お話しをうかがったが、植物への思いは熱く、中国だけでなく、折あらば中央アジアへ、パキスタンなどにも関心を広げていることを知った。そんな著者の熱き思いが300点以上の見事な写真となってほとばしり出ているのが本書であるが、いずれ本書をさらに凌駕する「ライフワーク」の誕生を予感せずにはいられなかった。
このたびの新版では、フィールドの景観写真が掲載されているのも初版にない試みで、荻巣さんの世界がさらに印象深く迫ってくる。
植物好きの人ばかりではなく、峨眉山をはじめとする中国西南部の自然・風物に関心をもつ方々にも最良の書として本書をお薦めしたい。
金井弘夫 国立科学博物館名誉館員。CULTA理事
荻巣さんの『幻の植物を追って』が増補改訂される。前著は新聞の連載をまとめたもので、文も短く折角の見事な写真も小さくて、著者も読者も隔靴掻痒の感を否めなかった。今回は判も大きく写真も約3倍にふえて、両者ともようやく腹の虫が収まることだろう。そしてこの分野に足を踏み入れようとする人たちに、新たなエネルギーを与えるに違いない。