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はしがき

ブラジル産薬用植物事典

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『ブラジル産薬用植物事典』より

ブラジルに移り住んで60年が過ぎた。この間好きな植物の研究にその大半を費すことができたのは幸いといわねばならない。この間におけるブラジルの変貌は実にめまぐるしいものがある。

「最初2年間の学校生活を終え、サンパウロ市近くに住んだことから、この地方を中心に採集をはじめた。少し言葉を覚えてからは、サンパウロ植物園に通い、標本と文献を見ることができた。

当時、日系人社会に創設された栗原自然科学研究所に参加し、研究を進めたが、日本とは異る植物群が多く、驚異の連続であった。この間サンパウロ州の各地を歩き、採集の途中に道を失い、原生林の中に一夜を明かしたこともあった。また遠くゴヤス州に1ヶ月の旅をし、インディオ部落にその生活をたずねたこともあった。

「第2次大戦が終ると、広いブラジルをもっと知りたくなり、まずパラグアイ国境にあるパラナ州のグァイラの町に居を移した。ここでは農事試験場の経営の傍ら、この地方の調査に力を注いだ。国境を流れるパラナ川にセッテ・ケーダスの大瀑布があり、下流にあるイグアスーの瀑布と共に覇を競っていた。

「ここは当時国立公園であり、特別の許可を得て、定期的に採集を行ない、多くの珍種を得た。また 周囲にも歩を運んで、パラグアイやアルゼンチンにも入って見た。この辺には甘味料として有名なステヴィアがあり、またマテチャの自然林やその製造工場も調査することができた。滝にはカワゴケソウ科の多くの種類があり、水量の変化によって、その生態が著しく異ることなどを観察することができた。しかし、後にパラナ川の下流にイタイプーの大発電所が建設され、滝は完全に水没、周囲の森林も完全に失われてしまった。この地区で得た国内で最も多くの標本は今、僅かに私の標本館に残っている。

「グァイラの町は水没を免れたが、この地域の動植物を集め、1962年にセッテ・ケーダス博物館を設立した。これはブラジルにおける日系コロニアで最初の博物館となった。第2の博物館は、同じパラナ州ローランジアの町に創設した。ブラジルの日本移民70年を記念として、パラナ州在住の日系コロニアの協力で、1978年に、この州の開拓や農業の歴史を資料と写真で展示したもので、パラナ開拓農業博物館である。

この博物館の建設には当時の梅棹忠夫、国立民俗学博物館長の御来訪を乞い、種々の指導を仰いでいる。また開館には、当時の明仁親王殿下御夫妻の御来訪があり、その後は徳仁皇太子殿下をお迎えしている。

1983年にはすべての公職を退いて、研究に専念することになる。

この年、サンパウロ市に移り、長い間の懸案であったブラジルの薬用植物の調査を、トヨタ財団からの研究助成を2年連続受けて行なうことができた。アマゾン地方、中央のサバンナ地方、東北部のカアチンガ乾燥地方、南部の草原地方、中西部のパンタナル大沼沢地方と、席の温まる暇もない程の調査を重ねた。またこの間に、別の調査班に同行することも多く、資料や標本は膨大なものとなって行った。

1990年にはトヨタ財団から成果発表の出版助成を受けることになり、原稿の執筆にとりかかった。本書は最初の計画ではブラジルの薬用植物は栽培、自生を問わず、すべてを含める予定であったし、英文、ポルトガル語の梗概も加えることにしていたが、これらを含めると膨大な量になるし、何時完成するかも判らぬことがわかり、ブラジルに自生または帰化したものに限ることにし、梗概もすべて省略することにした。それでも、最初2年の予定が5年を費すことになった。

本書で最も力を入れたのは文献の渉猟と正しい学名の選択である。ブラジルの薬草の書には学名の選定に杜撰なものが多く、本書ではすべてにわたって、その文献データを挿入することに努めた。そのため、学名の異名、その文献名がふえたが、これは本書の特色の一つであると思っていただきたい。

世界で最も広い熱帯雨林を含むブラジルには未知の植物がなお多くある。今後の調査によって薬用植物の種類も多くの追加を見ることになる。一方、環境破壊の現状はまことに憂うべき状態にある。これは長くブラジルに在住して目のあたりに見てきたことであり、貴重な有用資源植物が永久に失われつつあるのは、まことに心痛にたえない。

1950年に創設したサンパウロ博物研究会も、これらの資料や標本を後世に残すべく、一昨年から、標本館の建設を進めているが、完成までにはまだ多くの困難がある。しかし、標本館建設の意義を理解されて、今日まで協力をいただいた方々、また遠く日本の知友各位からも多くの協賛を得たことは感謝にたえない。この標本館は薬用植物を多く収めた特徴あるものとしたく、その完成を期待している。

本書の執筆、出版に当っては実に多くの方々に御協力をいただいたことを感謝申し上げる。

共著者、西本喜重先生とは遠くて最も近い関係で御指導いただいており、特に成分の部では厳密な校閲をしていただいた。先生の弟子、井ノ上俊介氏にはその属するナチュラル・グループ株式会社の理解と共に常に身近にあって、成分の調査そのほかに多くの協力をいただいた。

トヨタ財団には2回にわたり多大な研究助成をいただき、さらに、今回の出版助成をいただいたことに厚く感謝申し上げる。博物研究会の越村建治会長ならびに歴代の役員諸氏には物心両面において終始変らぬ御協力をいただいた。

本書出版についてはすべての点で心暖まる御世話をいただいたアボック社の毛藤圀彦社長、並びに社員の皆さんに、また有益な助言や協力をいただいた坂嵜信之氏に心から御礼申し上げる。

1996年4月 橋本 梧郎

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