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わが家の動物記(3)

1991年4月8日 鎌倉朝日
1991年4月8日 鎌倉朝日

たくさんの樹があって水が湧き、風が吹く――。わが谷戸は、かわいい小動物たちの恰好の棲み家であったが、ふだんは、これら先住者たちの気配すら感じないほど静寂で、生活空間としても快適だった。

私は、通勤が急に嫌になって、仕事場を丸ごとここに引っ越すことを考えるようになった。

当時私は、東京の本郷に仕事場をおき、植物情報関係の企画やら出版編集の仕事をなりわいにしていたが、移転を決心するや、「自然の中で考えないとよい企画は生まれない」などと仲間にうそぶいて回り、仕事にからんだ人々の説得にもなんとか成功した。

引越してうれしかったことは、自由な時間ができたこと。困ったことは、時間のけじめがなくなったことである。幸か不幸か、その後の私の時間は、生活も仕事もごちゃごちゃになった。わが動物との生活は、こんな中ではじまったのであるが、彼らとの出逢いは、ほんの一時期にいっぺんに、ちょうど津波がおしよせるようにやってきた。

はじめに、一つだけ言い訳をしておくと、仕事をしながら生き物を飼うことを、私は子供のころから夢みていたふしがあったことである。

さて、わが家の一番手は、小山羊の“みどり丸”。

小笠原諸島という島々―、東京から約一千キロ南下した、太平洋上に浮かぶ島しょ群だが、動植物の宝庫、東洋のゴラパゴス島と呼ばれる島々である。みどり丸はこの島からやってきた。

名付け親の私の子供らによると、食べるものは草ばかりなので“緑”なんだそうだ。ネコやイヌしか知らない子供たちには、草を食べる動物は奇妙な生き物にうつったにちがいない。みどり丸の毛は、全体が黒で、一部額やお腹、前足首などがポイント的に真っ白。なかなかのスタイルで、この黒山羊はたちまちに、子供たちの好奇の的をなった。近くの幼稚園でも話題になったらしく、先生引率で見物にやってきた。

みどり丸は、小笠原の山で生まれた野性の山羊である。父や母は判らない。

ある日の夕暮れに群れから離れて、岩場の斜面に立ちつくしてメイメイと泣いていた。

みどり丸は、たぶん崖から落ちたのだろう、左前足の足首を骨折していた。私はなんなく獲えて、抱いて下山した。まだ生後二ヶ月にも満たない小さな奴だった。

みどり丸の遠いふるさとはどうやら小アジアらしく、かなり特殊な系統に属する―、と教えてくれたのは、京大の霊長類研究室の鹿野君だった。鹿野君は名前が鹿のくせに、小笠原に棲息する山羊の行動調査を行っていた不思議な青年で、彼とは約3週間ほど自炊生活をしたので、私も山羊にくわしくなった。

小笠原に山羊が持ちこまれたのは一八三〇年、欧米系の島民が食料源として連れてきたのが始まりだ。その後江戸末期にペリーや捕鯨船などが数系統を入れた。これらは島内でのみ交雑し、特殊な系統をつくった。世界に珍しい隔離系統保存が実現していたのであった。

ところが、小笠原の山羊は繁殖しすぎた。エサである植物が豊富だったからである。しかしあまりにも殖えすぎて貴重な島の固有植物たちの食害が目立ちはじめた。詳しくははぶくが、父島の山羊は一時、三千頭に達し、村役場ではライフルによる一斉駆除を行っている。

みどり丸は、その生き残りだったのだ。

みどり丸を飼いはじめて困ったことは、その旺盛な食欲であった。なにしろ夜明けと共に腹をすかして啼きだし、一日中食べまくっている。それでも、しばらく、谷戸の山地の適当な場所に繋いでエサを確保していた。

クロもはじめは、自分に似た黒い変な奴に、見てみぬふりを決めこんでいたが、眼のとどかぬ所では実は敵意をむき出しにしていた。大家もとうとうおこり出して、「家畜を飼うのだけはやめてくれ」といいだすしまつだった。

そうこうしているうちに、二番手が現れた。テナガザルのウークンである。(つづく)(元・鎌倉市岩瀬在住、環境と植物の情報を扱う「アボック社」社長)



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