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フリードリッヒのコルンリンゲンの村

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毛藤勤治


コルンリンゲンの村は地図のどこを探しても見あたりません。だから、この村には郵便番号もありません。ただ、その場所は、今日の農業がうまくいっていないところにあります。とアンスト・アンドレアス・フリードリッヒが彼の著書「新しい農業のモデル」のはじめに書いています。

そして、このコルンリンゲンの村の人々は、フリードリッヒが考えた経営間協同つまり分業的な経営チェーンという新しい農業方式のもとで、いままでどおりの、土地を所有し、その他家畜や農機具など、いっさいの個人的な資産をそのまま守りながら、農民的な家族経営を進めています。と結んでおります。

このフリードリッヒのコルンリンゲンの村は彼の頭の中で誕生したシミレーションモデル(仮説の上に組たてした理論的な虚像)の村には違いありませんが、彼が西ドイツのニーダーザクセン州農林省の情報官として、長年にわたて農村成人教育活動をしている中で、多くの年若い農業経営主との接触と話し合いから求めた生の声に基づく発想であることと、もともと彼は経済学を専攻したドクトルであって、学術的な理論づけがなされている点で、まことに現実性に富む内容で、整然とまとめあげられています。

さて、フリードリッヒは、今の多くの農家がその経営を伸ばせにでいる原因として、①経営規模が小さすぎる。②買い入れた機械が十分に利用できない。③労働力が足りないことをあげ、農業生産に役立てよう、儲かる農業を進めよう、生活の向上を求めようとして、せっかく築いてきた農業機械化と農業施設の近代化も、結果的には背負い切れないほどの負債をもたらしたに過ぎなかったと指摘しています。

この指摘は、日本農業にもそのままあてはまるのではないかと考えられます。


農業政策の反省から

そして、その理由は、いままで進められてきた農業の近代化が、どうしてこんな結果を生じたのか、それは、労力と土地と資本とが経営の内部でうまく噛み合わないためであって、この状態を改めないまま、いかに国が農業を前向きに動かして行こうとしても、ちょうど、桂馬や王を宙づりにしてチェス(西洋将棋)をやるのと同じで、定めのない旅のような結果におわってしまう。だから、これまで色々な事柄を取上げて行なわれた農政は、どうしても、農業を惨めな経済状態から救い出すことができなかった。といままでの農業政策を深く反省しています。

このような反省の結果、フリードリッヒはつぎのようなことを考えました。

① 農村に住む者全体が生き残らなければならない。つまり、最も大切なことは人間の生活であって、農村が新しい方向に向うにあたって、隣の経営を圧迫したり、あるいは倒したりするような非人間的な政策も、また個人的な行動も絶対に許されてはならないし、「一人は皆のために、皆は一人のために」というライファイゼンの思想を核心とすべきである。

例えば、現在、高い水準にまで発達した施設や機械をもととして、農業の経営規模の拡大をはかろうということを、今の農村の中で行なおうとする場合、誰が残るかということより、一人が残るために農村を去らなければならない九人近くの農家が取り除かれる結果になる。このような無慈悲な首切り政策は、あくまでも、これをさけなければならない。

② 農業の存続は農民的意識の強い現在の家族的農業経営の中で求められなければならない。つまり、農場や牧場を商品同様に売買したり、また農用地を単なる資本家の手による資本主義的な使用に委ねべきものでない。あくまでも、宏遠な農業の終局的解決能力を持つ農民的農業意識に燃える家族的農業経営形態を守り続ける農民のなかに求めなければならない。

そして、この新しい農民的農業の確立は地域を抜きにしては考えられなく、ここに住む農民間の共通した強い意志と、積極的な行動が、新しい農業成立の要素であることを認識し、これを守り抜かなければならない。

③ 食料を確保し得ない国民経済は不健全であるという観念を、農業の国家的使命観としなければならない。つまりこれは、国際貿易による食料輸入を呼ぶ立場とは表面的に矛盾するかも知れないが、ひとつの国家として自国の資源を最大限に生かして国民食料を生産するという意思は、国土をもつすべての国に共通する国家的認識であることから、この考えは本質的にはすこしの矛盾を持つものではない。


コルンリンゲンとは

以上のような根本的な考えをもとにして組立てられたものをフリードリッヒはコルンリンゲンと名付けました。

まず、彼は、農業経営の特化ということを考え、ソ連のコルホーズが採用している農業の併合でない形、つまり、合併しないで、お互いが?み合うことで生産の条件を整えようとしました。

しかも、この特化された経営がすべて流通面を受け持つ生産者組合に結合するという共販の体系を考えたわけです。

だが、いくらこのような新しい農業の進めかたを考えたとしても、相手である農家の人々の意識がマチマチであるのと、第一、ひとりひとりの農家が財産として所有している土地問題ひとつをとりあげてみても容易でないことが想像されます。

そのうえ、コルンリンゲンでは、農家の意思を強く拘束する、いわゆる協業経営の型式をとらないし、これを進めるのに、すこしの搾取的なことをもしないことが信条とされているから、ますますもって、「はたして、そんなことができるのか」との疑いを深めざるを得ません。

しかし、フリードリッヒは、とてもすばらしいことを考えました。

人間が経済社会の一員として生きて行くために持たなければならない条件として連帯に対する能力と約束に対する能力がありますが、この能力のうちとくに約束に対する能力、つまり契約行為に焦点をあてて農業の新しい仕組みを考えたことです。

そういえば、現在の一般経済社会ではあらゆる事柄についての対処はこの能力の発揮がもとになっていますし、企業でも金融でもすべて契約行為で運営されています。これを農業に取り入れようとしたフリードリッヒの構想がたしかに、すばらしいことだと思われます。

フリードリッヒはこの契約行為を中核として『農家の所有と経営が相互に補充する形で分離された家族的経営方式』という新しい経営方式を組立てて、これを経営間協同または分業的経営チェーンと呼び、この型式で行なわれる農業方式をコルンリンゲンとしたものです。

したがって、コルンリンゲンでは、相互が保証される契約のもとに分業的な生産が行なわれるので、他人の牛や豚や鶏を飼養するし、あるいは、畑作業の機械を全く持たなくても農場や牧場を営むことができる訳です。

以上がコルンリンゲンがもつ構想理念のあらましです。ところで、このフリードリッヒのコルンリンゲンの構想を知った西ドイツ・ニーダーザクセン州の農林大臣ハッセルマンは、そのすばらしさに感激し、連邦政府に対して、つぎに要約されるような内容の処見を書き、ただちに、国の農政のひとつの柱として取り上げるべきであると忠言しました。


コルンリンゲンの長所

① 現有の高能率な近代的機械を、土地所有関係に手をつけずに、利用規模を拡大し、高能率で活用できる方途を創出しようとするコルンリンゲンの経営間協同システムは、全く新しい農業経済の主題である。

② しかも、農業の生産コストの低減について非常に確実な根拠がこのシステムの中に存在していて、農業の将来についての脅威でさえある。

③ 現在、資本主義の進歩に伴い、就農の場と満足のいく収入の機会を失なう者が続出しているが、これをセーブする機能発揮に期待しうる。

④ 一方、よしんば農業から他に転職する者、または早期引退する者があっても、『緑のふるさと』を奪うことなく、人間ひとりひとりが他のあらゆる職場で生活する上に必要な資産(最小限に土地と住宅)の保有が持続される配慮がなされておってヒューマニズム(人道主義思想)に一致する。

⑤ 現在の商工業部門が、すべての労働者に対して、資産形成を大きな社会的緊張のもとで達成しようとしている課題に正しい解決を見いだすのに役立つ。

⑥ 最後に、現在、農政の中で取りあげられている特定作目の専門化経営が生産物価格の変動に対し、まことに危弱であるのにくらべ、コルンリンゲンの農業システムは、分業化された専門経営であり、しかも、分業の総合化体制という強力な調整力を持つことで最高の評価が与えられる。

以上のようなハッセルマンの提言をうけた連邦政府は、直ちに、実行に移すことを決め、翌年の四月(一九六九年)にはニーダーダクセン州の実在の村、ベッケンドルフで、フリードリッヒが考えたものとほぼ同じ規模で、その実施をスタートさせました。

いかにお国柄が違うといっても、いままでの日本にくらべ、そのやり方のスピーデーなのには驚くばかりですが、それよりも、むしろコルンリンゲンそのものがいかに大きい意義をもつものかを証明するものだと受けとめるのが正しいと思われます。

このようにしてコルンリンゲンという新しい農業のモデルは、もはや単なる灰色の理論ではなく、ゲッティンゲン大学農学部経営研究所の科学的な助言によって進められることになりました。

ベッケンドルフ村では、十六人の農家集団で行なわれ、二人の農家が乳牛飼養二人は肉牛の繁殖、二人が肉牛肥育、二人は子豚生産、二人が鶏、一人が七面鳥、二人が農耕というようにそれぞれ特化され、残りの三人のうち、一人は馬術指導と貸馬、一人は高校教員の有資格者なため農業をやめて就職、最後、家族を失った娘さんが生産者組合(各コルンリンゲンが構成員となって組織する農業協同体)に事務員として働くことになりました。 だから、この三人はこのグループでは兼業農家であって、自ら農業をやらないが、いままで持っていた土地と家畜およびその他の農業資産との結び付けで、立派なコルンリンゲンの仲間なわけです。


問題の想定と対応

しかし、べッケンドルフ村のコルンリンゲンは、はじまって間もないことでもあり、また、まとまった成果の情報をうる段階に達していませんが、フリードリッヒが自分の考えの中でコルンリンゲンを構成する架空の農業者の一人一人が、その名前こそ違っていても、実在の農家として再現されているということですから、ここに、自らコルンリンゲンの一員となって経営間協同を実現した農業技師で養豚家の「クラウス・ヤーゲマン」に登場してもらい、コルンリンゲンが実際に行なわれる場合に発生するだろうと思れるいろいろな問題をたずねてみたい と思います。

ヤーゲマンは、自分がかねがね最も得意とする養豚経営に特化するため、自 の乳牛二十頭と鶏六千羽を仲間に預け、その代り仲間の豚三百頭をひきうけ、いままで自分が飼っている百頭の豚を合せ四百頭経営の分業経営主となった人です。

◇ この仕事を決心した動機は…

ヤーゲマン…今の農業は技術面で、もうこれ以上大した進歩がないなら、経営組織の分野で進むしかないと思っていたやさきだったことと、単一な作目による経営拡大―畜産ではひとつの畜種の多頭化経営ですが―これらの専門化は足が一つしかないため、生産物の価格や収益が低下した場合に、打撃をうけやすいことを反省していたときだったからです。

ことに、このような危険をふやさないで、しかも専門化するには、専門化を分けること、つまり、資本や作業の部面では単純化するが、所有面ではそうしないで、多くの足の上で経営を専門化してゆくことです。具体的には各農家が自分の経営の中で、あまり儲かる積りがなくても、組合せとしてやっている部門を、放棄せずに、もっとこの部門に適した別の経営に移すというやり方で多くの足で立つことができるだろうとの考えをフリードリッヒの理論の中に見いだしたからです。

◇ 分業的な経営チェーンとは…

ヤーゲマン…各自の農業経営が合併しないで、互いに噛み合うことでチェーン(くさり)の意味はわかってもらえると思います。チェーンの第一の結合は個々の経営者間の内部的な関係でありますが、これだけではいけないので、農業関係の全作目のひとつひとつを中核とする各生産経営体が、すべて生産者組合に結合することによって、外部的な第二の結合をもつわけです。

◇ 分業的なチェーン経営の根底は…

ヤーゲマン…いっさいを契約の上に立たせることです。契約の前提は相互信頼ですし、契約の成立とその履行は、相互に保証を与えてくれます。

◇ 預けた家畜が不十分な取扱いをうけたりすることの心配は…

ヤーゲマン…コルンリンゲンの仲間は、それぞれ最も得意とする部門に特化されるので、自分の信用をますます大きくするために特別な努力をしています。なるべく沢山の家畜を仲間から預って立派に飼育し、純然たる利益の増加を図るためにも、また、自分の評判がよくなって仕事が伸びるためにもです。

私どもは、個々の経営が互に契約とその保証で結ばれ、しかも、自由で独立した経営として存続されますので、各人は自分の経営の主人であって、最終的には自分と自分の財布だけに責任をもてばよいのです。これで、コルホーズのような 生産協同組合や作目を一つにしぼる農業者集団の全面協業のやり方とは全く正反対な立場をとっていることがわかると思います。

◇ 自分の家畜と仲間のものとの区別は

ヤーゲマン…私たちのやり方はあくまでも、家畜でも牧草でも野菜や馬鈴薯でも同じく、完全管理の範囲にとどめ、けっして、お互に生産の領域にまで足を踏み入れてはいません。で、家畜・畜舎・農機具その他の施設は、各人の所有物です。そしてその中で飼われる家畜、私の場合は豚ですが、すべて囲いで分け、一つの囲いが空になると、また、仲間の誰かが十頭の子豚を入れるわけです。もっとも、新しく入れる相手とは一年も前から話し合って、われわれが造っている組織センターに登記されていたものです。他の家畜もみなこの例にならいます。

ところで、豚の場合、価格周期があることから、公平な保償が与えられるため六年契約、牛では生産周期に応じた十年契約、牛の肥育ではその中間の契約期間が必要だと思っています。

そして契約はみな一年の解約予告期限をもつこととすれば、差し迫った理由で解約しなければならなくなったときでも、予告期間内に、新しい契約相手を探したり、生じている問題の解決をはかる機会を十分にもてると思います。

◇ 乳代の精算は…

ヤーゲマン…乳量は正確に測れる装置によりますが、脂肪量については厳重な事前検査によって一頭毎、点数で生産者組織に記録され、飼養農場の労賃、資本、飼料などの支出分を引いた残りが、一定の方式で乳牛の持主に配分されます。

◇ 何か生活面での有利なことは…

ヤーゲマン…各人が栽培したり、飼養したものが流通過程に入った場合、一定の割合で生産者組合から発行されるチケットにより、いっさいの食料が実費で現物化できる生産者組合直営ストアの開設で食生活の部面が解決されるし、また、耕作担当の仲間には、冬の仕事として、生産者組合の製粉・精糖・畜産加工工場などの仕事が待っているし、ここではへルパーもくり出してくれるばかりでなく、必要によって、農外就労のあっせも行います。

◇ 後継者養成についての考えは…

ヤーゲマン…分業的な経営チェーンの後継者は、各経営間の実習契約により、われわれの仲間を順次、まわって広い知識と技術を得、その中から自分の適性を見いだせる方式によります。なお、自分が分業的経営主となったとき、他の仲間の経営を理解できる目を養っておく訳です。

◇ 結論として、あなたの信念は…

ヤーゲマン…農民は、歩んできた過去によって将来を律することなく、未来を目標としなければなりません。そして、農民が作った物が市場に即応した形で供給される場合にのみ満足のいく収入が得られるだろうとの認識に立ち、農業経営学の老大家、エフ・エルボウの『農業は借入資金の運用によって進めうるようにならなければならない』という営農の原則に忠実に従うことであると信じております。

そして、私が最後に望むところは、農政がこの考えの方向に転換するならばすべてのことがもっと円滑に進むことになり、その結果、納税者である一般国民が『農業に対して費いやしてきている莫大な公共投資が、ちょうど、底の抜けた入物に水を注ぐようだ』との考えを改めさせるのに役立つだろうという点です。

以上のほか、フリードリッヒはヤーゲマンの口を借りて、私たちが知りたいことを、詳しく述べていますが、財団法人・農政調査委員会発行「新しい農業のモデル」―西ドイツの農業経営チェーン―(松浦利明氏訳)という本によって、これを理解できます。

ひとつの地域で行なわれたコルンリンゲンが、その地域内で限界に達するまで発達した段階ではおそらく、新しい土地の開発と並行して、第二次的な発生がそこに見られるでしょうし、あるいはいま北上山系開発構想の中で考えられているデモストレーション牧場のように、新しい土地に誕生するケースもでるかも知れ ません。

ともあれ、今日の農村は、いかにして生存のチャンスを自らの手で切り拓いて行くのか、そしてその果実をいかにして、自分の物にするのかを共々に考えて行かねばならないとき、本稿の内容は、私たちにとって、ひとつの新しい道しるべではないかと考えられます。


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