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第五章 根の不思議

第六六話 ハスの穴のはなし

泥中でも呼吸する

泥中で生きるからこそ、充分な空気が必要
この穴がなければ窒息してしまいます


植物の根は空気を必要としている。呼吸して生きているからだ。

泥中のハスは昔から諺になっているが、みずみずしい緑の葉、美しい花が清らかに咲いているのは、葉や茎に穴の道があるからだ。ハス(蓮根)というと食べられる茎(地下茎、根茎)しか見ていないだろうが、葉柄にも穴があいているのを知っている人は少ない。空気はこの葉柄の穴の通路を通って根の方へ供給されている。この穴の道がなかったらハスは窒息してしまうだろう。

いつかラジオの子ども電話相談で、ハスの穴はいくつあるの?という質問があった。調べてみると、肉眼で見えるはっきりした穴は原則として10個だった。しかも、泥中にあるとき上の方の背部に2つ、両側に各2つ、下の方の腹部に3つ、そして真ん中に1つと並んでいるのが標準的な形。スーパーでハスを手に入れて、切ってみるともっとくわしく穴の形などが分かり、面白い。天ぷらの材料でハスが出てきたら、試しに衣をはいでながめてみるのも一法だ。

葉柄には痛いトゲがあるが、手袋をして折ってみるといい。糸を引くので、びっくりするだろう。この糸は道管(水の通り道になっている細胞組織)内壁のらせん糸(藕糸)が引き出されたもので中将姫の当麻曼茶羅はこの糸で織ったものと伝えられている。気道の方は昔、中国では茄と名付けていて、古くから知られていたという。

かつて、恒例の上野・不忍池畔での観蓮会(2千年前の古代ハスを咲かせた故大賀博士も出席していた)で同会幹事の前島さんが〝象鼻盃〟を披露してくれた。つまり、若いハスの葉を良い葉柄をつけて折ってきて、お盆状の葉の中央に徳利の酒を注いだのである。ようじで中心に穴を開けると徐々に穴の道を通った酒は、下部の切り口から滴り落ち、「荷心の苦」という葉柄特有の香りと苦味を帯びた酒が口中にひろがる。風流の極致といえよう。このことを教えた原典『煕朝楽事』は明朝末期(1600~1640年)の書物で、当時、西湖で観蓮会が催されていたという。穴の道の存在をよく知り、かつは人心の楽しみにまで発揚した中国の先達に喝采を贈りたい。

その後、前島翁を練馬の私邸に訪ねた。思い出を下敷きに改めて〝象鼻盃〟について教示を受けたのがこの記事で、いわばうけうりである。老齢ながら記憶の確かなことに頭が下がったが、2、3日して追補のはがきの一文を見て、更にこの思いは深まった。つまり、幕末の詩人館柳湾が歳時記の「園林月齢」なる書の中で碧甬盃(みどりの盃)と呼んでいたという。

夏のある日、不忍池畔近くの精養軒で集まった多くの人たちに、このことを披露した。象鼻盃は中国の呼び名、碧甬盃は日本、どちらにも良さがあるが、私は後者のみどりの盃に親しみを感じる。

泥の中にあっても空気の供給をたっぷり受けているハスの知恵に驚異を感じる。また、ハスを活用して、ゆとりある人生を考えた人間にもひかれるものがある。

ちなみにハスの原産はインドで、日本には中国起源のものが伝わった。はじめの渡来は稲と同じころともいわれ、約3千年も昔になる。これを古代バスという。その後中国では改良がすすみ、ハスは花を観賞する花蓮と根茎を食べる食用蓮に分けられ、これらが断続的に日本に伝えられる。

日本名「ハス」の由来は、花が終ってから肥大する花托がハチの巣に似ていることからで、はじめ「ハチス」と呼ばれ「ハス」になった。観賞される花蓮は八重や千重などたくさん品種がつくられたが、奇形に、双頭蓮と多頭蓮があり珍重された。前者は一茎二花、後者は一茎多花が付く。

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