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森の観光地の緑化構想・覚え書

1986年9月号 北海道の自然
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森の観光地の緑化構想・覚え書

◎毛藤圀彦(株・アボック社代表)


天然林伐採中止宣言をふまえて

林野行政が従来の政策を大転換した。ブナやミズナラなどの天然林の伐採を、現在の計画を最後にして、以降中止し、その資源をそっくり後世に残す――40年ぶりの大改革。

こう伝える3月8日付の読売新聞夕刊の報道に、私は目をみはった。もしかすると、この地上から消えるのかと半ばあきらめかけていた、あの、あそこの天然素材は、すると伐られなくてすむ?もう大丈夫なのか?

半信半疑ながら最初に私の脳裏をかすめたのはまずこの思いだった。

もし、本当だとすると、これはたいしたことだ。我が国に残されている数少ない天然林の素晴しさを知るものにとって、また、これまで、止むことのなかった伐採の惨状に胸の痛みをこらえつづけてきた人々にとってこれは朗報だ。

でも、林野庁は今にして、どうしてこうもあっさりと路線変更を宣言したのだろうか。その理論をどこに求めるのか、読売新聞の報道を契機として、以下、私なりの解釈を加えながら、日ごろ考えている森や林やその周辺のことなどに及んでみたいと思う。


国民の信任を得ること

もう少し、新聞報道にこだわってみよう。これまでわが国の林政がとってきた路線は拡大造林というものであった。天然林も優秀な人工林に切り替えるという強引とも思われる早生林育成策であった。それはうまくいかなかった。国際化時代を迎え、木材価格が暴落し、林業経営自体がソロバンに合わなくなった。一方では自然保護団体からの強い批判にさらされた。内からも外からも行き詰った。

一般的状況解釈としてはこうなる。しかし、これはどう考えても積極的で暗い解釈である。もっと積極的な。明日から林政に輝くような方向性を期待し、期待されるような理念もあるにちがいない。現状への妥協ではなく、批判への同調でもなく、不振への打開でもない、もっと大きな視点でとらえられ何かである。

私はこれを国民の合意を今のうちにとりつけておこうとしたための転換ととらえているのである。

視野をかえてみよう。

国土の保全には二つの方向がある。これは定説である。一つは緑を守ること、他は国民を守ることである。緑を守ることはいうまでもなく、森や林を育成することであり、都市の緑化をすすめることにある。国民を守るとは防衛を意味する。

承知のごとく、この双方がいまだ今日的日本人の精神構造の中で充分な市民権を得られないでいる。市民権を得られないままに、国費を使うほど国策としての矛盾はない。それでも緑の側にはこれまで、自負があった。まだ緑の方が国民の信任を得ているという自負、それと防衛予算よりも林政の予算の方が上だという自負。

ところがこれが逆転した。少なくとも予算においては防衛費を下まわってしまった。このことは林政の関係者にとって大きな打撃であったのだ。こうしたショックで目が覚めた。このままでは引き離されるばかりだ。将来を考えた場合、ここでどうしてもふんばっておきたい。そのために国民の合意を得る何かが今ほしい。大きな信任を得るための何か…。

天然林伐採中止宣言はこうしたことを背景に生まれてきたものではあるまいか。


新しい組織と人間づくり

ところで、天然林保護策に将来の活路を見い出そうとする林政は今後どういう方向にいくのか。活路を見い出すのだから打ち出される路線はのんびりしたものであってはなるまい。そして新しい路線は、第一に内部意識の切り換えを必要とする。たとえば、これまで伐るべき対策であった天然美林を神木となせるか。しめ縄をはれるか。伐採現場は戦場であった。したがってここは一般の人は入ってはならない禁域であった。これをひるがえして、資源植物の宝庫、生物相の聖域として、国民の多くの人に解放し、その素晴しさをアピールできるか。国民の合意を得ようとするための政策は、この情報化社会にあって、柔軟かつ魅力に富んだ意識発想からしか生まれない。

意識の切り換えの次の問題は、基盤づくりである。新し組織と人間づくりである。

その組織面においては、かつて袂を分けた環境庁とのタイアップ、それに、都市緑化宣言で国民サービスに熱心な建設省との連携などが浮ぶ。特に環境庁との路線調整はうまくやってほしい当面の課題である。環境庁からは、国定公園の整備と運営のノウハウを提供してもらわねばなるまい。内部でもそのノウハウを受けとめる人材の育成が必要であろう。こうしたことがうまくいかないようならいっそ両庁の合併があってもよい。国の大事の中での路線変更は、大胆な組織変更をともなってもかなわないと私は思う。

アメリカの農商務省は大きな組織で、その傘下に森林サービス局(Nathiional Forestry Service) という活発な組織をもっている。、ここでは天然林と充実した二次林を孫子に伝えるためのあらゆる活動と研究とを行っているが、カウティ(郡)に配属された職員は、森林を守り、ここを訪れる人々へのレインジャーであるばかりでなく、生態系の研究員としての役割をも果している。町の緑化指導まで行なう。日本でいう博物館の学芸員的存在である。注目していのは、深い知識と広範な活動を展開し、これまで住民との接点の中で数多くの具体的な成果をあげてきた結果、彼らの社会的地位がきわめて高まったという点にある。

アメリカの家庭では森林サービス局の職員になることが子供たちの夢なのである。

私が林政のこれからの天然林保護路線に期待したいのは実はこういう意味での積極的な人間づくり、組織づくりなのである。


森の原体験

天然林保護策は積極的な意味あいにおいて文教政策である、と私は思う。国の文化に深くかかわることである。今日の近代主義社会の中に、自然主義を再び甦らせることである。

文教政策といっても、むづかしく考える必要はない。森や林や湿原の素晴しい生態を正しく知らせること、そのためにだれが、どのような方法でどうするのか、という問題につきるのである。そして、天然林の本当の姿をともかくも出来るだけ多くの人々に体験してもらうことなのである。こんこんと湧き出る泉と流れ、深く柔かな落葉の堆積、季節の中に咲き競う花、様々な形をした小さな植物たちの姿、群生、風や鳥たちの音、土の香り、光や糸や輝きの乱舞、小動物の気配、小枝や葉の美事な形、そして、なんといってもこの森の主役は、何百年をも生きてきた見上るような大きな樹木たちだ。

本当の森の中で遊んだ経験をもつ人は意外に少ない。本当の森とはどんな森をいうのかをも知らない人が多い。林は何千もの間に幾世代も重ねると、やがてクライマックス(極盛相)に近い林相をなす。日本が世界に誇るこうした天然林はやはりブナ、ミズナラ、そして尾久スギが主役となった森であろう。肥沃な谷間やなだらかな斜面にそれは広がる。亭々として天をつく巨樹の群れは、その一本一本が都会につれられてきたらご神体になるような様相をもつ。こうした巨体の下にいると人は小人になる。じっとしていると本当に樹々の声、草の声が聞えてくるのである。

私は文学を語っているのではない。しかし、こうした森を体験する人は都会の中で失ないかけている多くの感性をとりもどす。子供たちは豊かな情操の中で生き物としての己を意識する。このことを仮に森の原体験とでも呼んでおこうか。すると、都会の生活の中に何かが始まるだろう。木の家に住みたくなる。ブロック塀がいやになってくる。庭に木々を植えたくなる。街の緑も立派に育ってほしいと願うようになる。そして再び、森に近い町に家族づれで出かけていきたくなる。テレビの報道で、一機が100億円もする超音速ジェット戦闘機の購入が予告されると、そんな金があったら、森の博物館でもつくってほしいと思うようになる。

こう思うのが人の心というものだ。天然林保護策を文化の視点でとらえた場合、私は、そんな風に考える。

今年の正月にこんなことがあった。久ぶりの里帰りだったので、中学時代の親しかった仲間たちが集いをもってくれた。実に二十五年ぶりのなつかしい面々とも再会できた。ところがしばし歓談の後、話が郷里、岩手のブナ林に及んだのである。新聞やテレビなどで盛んにブナ林の保護について報道されているが、どうもピンとこない――というのである。聞いてみると、会席している誰一人としてブナの天然林に入ったことがない。私はあおった。「そうなんだ、小学校の時も中学の時も、今考えてみれば遠足などで森に入ることはなかった」「そんないも素晴しい森があるのに、どうして連れていってくれなかったんだろう」。話の結論は早かった。よし、雪どけのいい頃に、皆でブナ林を見に行こう。毛藤、お前が案内役だ。カアちゃんも子供も連れていこう。六月の第一週と日取りもほぼ決った。場所は盛岡市から車で三時間、岩泉町からさらに三十キロの山道をわけ入った安家(あっか)の森である。ブナの森の同期会、なかなか酒落ているではないか。私ももう一度童心にもどり、森を追体験しようと思っている。


森の観光地を緑化する

ところで、この稿を北大植物園の辻井助教授から依頼された際に、私には日ごろ考えていた一つのテーマがあった。それは観光地の緑化についてである。観光地といっても都市型観光地ではなく、自然指向型のそれである。つまり、自然を背景とした森の観光地を、都市の緑化以上の情熱をもって緑化してみようというテーマである。

今、私の手元にヨーロッパとブラジルの緑化運動の事例がある。その成果はきわめて興味深いものだ。残された紙面が少ないから、以下にその要旨のみを伝え、前記との脈絡を合わせてみたいと思う。

この運動は一九七五年に最初、フランスとイギリスで始ったが、たちまちのうちに全ヨーロッパに波及した。名称をエンテンテ・フロール(Entente Florle)という。その意味は「花を通じての相互理解」となる。この呼称は全体の運動理念となっていて、具体的には花飾り国際コンクールを開催する。

コンクールには都市の部と村の部がある。村の部は人口によってさらに二つに分かれる。採点基準は  ①芸術的センスと全般のデザイン ②植物の組み合わせと質 ③建物や構造物と花や緑の色との調和 ④立地を生かした植栽スタイルと花の継続性・緑の量 ⑤住民と自治体の努力の調和…以上百点満点で順位を決定する。審査は国際審査委員会が行う。

この名誉とトロフィーを獲得するために各国の街や村が住民もろともの活発な緑化運動を展開する。勝者には、受賞マークを観光パンフレットに刷りこむことや、記念碑の建立などが許される。受賞した村には泊まりがけで観光客がやってくる。観光資源をもった自治体はこの運動に最も力を入れる。ある受賞地では、新住民もふえる。そのため地価までが高騰するという。

各国では、この晴れのコンクールに推挙されるための予選審査がある。一国で三市町村しかこの資格は与えられないから、自治体は知恵をしぼって他にないような趣向をこうじる。たとえば自治体負担で提供する花鉢のデザインなども、その町々で工夫される。種子や苗木の選定にも凝る。これらの費用は全て自治体負担であり、全体は農務省がみる。

住民は、花を飾るのにとても熱心である。自分の家が、隣りよりも、少なくとも同じ位にきれいであってほしいと思うからである。こうして緑の街・花の村々がヨーロッパ各地に生まれていったのである。

この運動理念が、遠いブラジルにも飛び火した。ここブラジル南部の小さな町グラマートは、かつてはごく平凡な観光地であった。この地はパラナマツの天然疎林を背景とする気候温暖な高原地にある。町はずれにナルキサスという名の滝があって、これが唯一の呼び物であった。ところが八年前から始めた官民一体の緑化運動が実って、今や花と緑の素晴しい観光地に変身した。美しい花の四季を見に、この町に休養を求める多くの宿泊客が来るようになった。私が訪れた時も、町民と観光客とが、花や庭を背に歓談する光景があちこちに見られた。

シンボルの木はアジサイとサルスベリが決定した。いずれも花期が長く、この地方に適する。まず町は、共有地で道が面する全ての空間にアジサイを挿した。十万本単位で挿木して、毎年、同じ数だけ補植したという。数年して町のあちこちにアジサイの斜面ができ、それがやがて私有地にまで及ぶにつれ、個々人の庭の手入れが始った。家々の花や木は思い思いの趣向による。これがまた素晴しく、町の新しい呼び物になった。

この話にはオチがある。この町から南へ40キロ先にアパラドス自然公園がある。パラナマツの充実した天然林である。以前はここを訪れる人はきわめて稀であったというが、この町が素晴しい宿泊保養地になってから様子が変った。この森にまで足をのばす家族づれのハイカーがふえ、一泊の泊り客がこの町で二泊するようになったというのである。

花と緑の運動は、非常にスケールの大きな課題であることがお判りいただけただろうか。こんな視点でわが国をふりかえってみると様々な感慨が湧く。観光客に自然を満喫して泊ってもらえるような手だてはさまざまにあるものだ。


メモランダム

森の観光地は日本にたくさんある。自然資源のレベルも世界に比し、優るとも劣らない。北海道などの観光地のほとんどがこれに当たる。森の観光地緑化は、都市のそれよりも成功率が高い。これは私の予測である。その着眼点を前述した岩泉町に求めてみよう。

岩泉町は北上山脈の山ふところにある。人口は一万七千人で、そのほとんどが山林である。したがって町民は何らかしか林業と関係をもつ。しかし現実にはこの町をささえているのは林業ではなく観光である。この町には龍泉洞という鍾乳洞があって、観光の目玉商品となっている。毎年40万をこえる人が訪れる。しかしここの観光行政は思い悩んでいる。観光客の多くが通過型であるからだ。客数が毎年確実にふえているにもかかわらず町の宿泊収容数はきわめて少なく、ふえる兆もない。町民の多くはバスの窓ごしでしか観光客を見ない。これではおらが街のお客様とはいいがたく、町民も無関心を装うしか手がない。滞在型をめざす役場でも打つ手は今の所ない。こういった傾向は日本全国の森の観光地が共通にかかえる悩みではなかろうか。

以下に記す森の観光地の緑化メモは、こうした現実をふまえての私の覚え書きである。

  1. 緑化の理念をもつこと…観光資源の周辺は町を花や緑で飾ろうとする町民の統一した意志。
  2. 町から天然林までの緑化…林野の新路線による超目玉資源(天然林)の観光地への解放。町までの区間の緑化整備事業の展開。同時にフロラを展示解説する一級の森の博物館の創設。
  3. 役場内にオープンスペースサービス部の設置…観光地緑化をすすめる心臓部。緑化すべき共、私有地の管理と奨励。
  4. グリーンリーダーの養成…緑化園芸相談員・自然観察指導員・レインジャー。
  5. 基本構想の外注…都市緑化構想に優秀な提案作品をもつ造園家集団に依頼。
  6. 緑化マニュアルの作成…おらが町特製の緑化指導書。管理のためのノウハウ集。
  7. 町のランドマークの再発見とサインの充実…特にサインは訪問者に親切で美的に優れたもの。外国人観光客のため英文解説も必備。

以上、自然保護関係の方々に何らかのヒントとなれば幸いである。(株・アボック社代表)


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