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やさしい植物学 花や緑の生育限界がわかる「気候帯」 日本でも作成を望む

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1990年1月12日 読売新聞「家庭とくらし」

耐寒性

植物がどのくらいの寒さに耐えるのかを知ることは大事なことだ。木や草花の主な種類だけでも知ってほしい。

耐寒性はハーディネス(Hardiness)といい、欧米では専門書から一般の園芸書まで、ハーディネスゾーンを示しているのが多い。

たとえばアメリカの場合、国土に平均最低温度で十段階の気候帯(クライミットゾーン)を決めている。

これを見ると、たとえばジンチョウゲは7~9で、テネシー州からフロリダ州中北部まで、暖地性のアガパンサスは8~10で、テキサス州からフロリダ州南部までというぐあいに生育限界がわかり、自分の庭に何か植えようと思うときのよい目安になる。ただしアメリカの場合、華氏(F)で温度表示をしているから摂氏(C)に換算しないと、私たち日本人にはわかりにくい。

ヨーロッパでは両方で示している例が多いので親切だ。昨夏、ハンブルグの大農園主とあったときに贈呈されたカタログにも、ドイツを中心としたヨーロッパのクライミットゾーンが表示してあった。

もと新日鉄副社長のIさんは、小石川植物園で働いていたころ知己になった人。東京・杉並にお住まいだが、自宅の庭の冬の最低気温、夏の最高気温を毎日記録して、花や野菜づくりに資されているという。雪、霜、梅雨どきの雨などもメモしているから、ちょっとしたミニ気象庁だ。Iさんにいわせると、花に対するダメージは氷点下五度に一時間さらされるよりも、氷点下三度に三時間さらされる方が大きいという。

耐寒性についてはいろいろあるが、民間にも関心の深い人がいるという実例だと思う。

だから私は、日本でも世界に通用する花と緑のクライミットゾーンをつくろうと提案したい。

話は少しそれるが、冬の都心の街路、とりわけ銀座裏通りなど歩いた人は気がついていると思うが、プリムラ(西洋サクラソウ)やパンジーが植えられているのを目にする。本来は春咲きの植物だが、寒さにめげずに咲いている。心なごむというか、ほほえましいということのほかに、花の適応性も学べる。あるいは全地球の温暖化による世界的な移り変わりというのであろうか。

秋に欧米を旅すると、寒さが迫ってくるというのに、公園や庭の花壇にはパンジーが植えられ、花咲いているシーンにでくわす。日本ではパンジーは春の花壇材料としていた私たちには、奇異と感じたが、今はちがう。

東京ディズニーランドでも冬花壇の花はハボタンやベニジウムにまじって、パンジーが笑顔をふりまいている。銀座のプリムラもそうだ。

アメリカではウォーム(暖)シーズンの一年草と、クール(寒)シーズンの一年草と表示しているが、日本でもパンジーはクールシーズンの一年草として人々にもてはやされる時代が来たなと思う。

(園芸研究家・川上幸男)


[写真:本来は春の花だが、冬のうちから花壇に咲くパンジー]


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