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花の名前にご用心

著者:仙台市野草園名誉園長 管野 邦夫

著作権について

1.ジジババとズントババ

シュンランの花

中央右(蕊柱)がジジ
中央左(唇弁)がババ

どこの園芸雑誌だっただろうか、「シュンランの地方名のジジババは、お年寄り好みの地味な花が咲くところからの名前である」とあった。この執筆者は本気でそう解説したのだろうか。こちらの勘ぐりでは“キザな人”と、いや育ちの悪い私は“キザな奴”と見て取った。春蘭はガーデニングなどと、はしゃぐ若い人などではなく、やはり年寄り好みの花ではあるが、だからジジババとはちょっと違いませんか?

若いころ父と裏山へ松葉拾いに登ったとき、父は「このズントババ(宮城県南部でのジジババの呼び名)は、これこの花の構造が男女それぞれの性器と見て、その名前があるんだぞ」と教えてくれた。まさか意識しての性教育ではあるまいが、なにもためらわず花を開いて見せた。

さて、キザな人にはどうかと思うが、アボック社刊『植物感傷学H考・花の名前にご用心』の“シュンランの独り言”をご笑覧あれ…。

2.ヘクソカズラ

ヘクソカズラ
ヘクソカズラ

ヘクソカズラの学名
Paederia foetida(異名 P. scandens)も
「臭い」という意味から命名された。

右はヤイトバナの由来となったままごと遊び。

植物書や植物図鑑や植物園の目録などで、和名の取り上げ方の違いが見つかる。その一つにヘクソカズラ対ヤイトバナがある。

またまた育ちのよくない私は、言わずと知れたヘクソカズラ派である。糞尿で育った農作物を食って育った者だから、屁糞にあまり抵抗を覚えないのである。いやそれだけではない、千年も前から呼ばれている名前を尊重したいからである。

万葉歌の一首に「サイカチに絡み付くクソカズラのように、いつまでも貴方のお側で宮仕えをしたいものだ」とあるクソカズラだからでもある。後から呼ばれたのであろうヤイトバナは、子どもたちのお灸遊びのままごとからの名前で、これは別名としたい。水洗トイレで育って、自分の排泄物の臭いを知らない人達へ。ヘクソカズラをちぎって部屋に下げて見てもらいたい、そのうちそこらに“おなら”の臭いが漂うことだろうから…。

3.サルトリイバラで猿を捕る

サルトリイバラの果実
サルトリイバラの鋭い刺

左:サルトリイバラの果実

右:サルトリイバラの鋭い刺

牧野植物図鑑のサルトリイバラの和名の由来には「猿捕りイバラの意味でトゲがあって猿(サル)がひっかかるという意味である」とある。猿捕りイバラに間違いはないが、この茎につく刺で薮こぎをしたときなど、ズボンをやぶった子どものころの経験から、山の猿も引っ掛かるのかと思いきや、そうではないようである。

まだテレビなど無かったころ、ラジオで猿捕り老人の話を聞いて頷いた。その話は「檻を作った中にサルトリイバラの果実をいれておくと、これを好物とするサルが檻に入る、こうしてサルを捕獲するのだ」とのことだった。早速サルトリイバラの果実を持参して動物園にでかけた。終戦後の“こども動物園”には猿山はなく、小さな檻の箱に飼われていた気の荒い雄猿ジロウに、その果実を近づけると、鷲掴みに引ったくり、むしゃむしゃ食ってくれた。

それから50年が過ぎて、図らずも京大名誉教授日本モンキーセンターの河合雅雄先生とテレビ『奥の細道』の番組でご一緒させて頂けた。野草園内での取材だったので、これ幸いとサルトリイバラの猿捕り老人の話をしたら、「そう沖縄などでやってますよ」と、先生のあのなんの気負いのない語り口で教えていただいた。

4.同定から分類へ

ヌスビトハギの花
ヌスビトハギの果実

ヌスビトハギの花(左)と果実(右)

たしかに泥棒や盗人に狙われたり
つきまとわれるのは迷惑このうえない

「[日本名]盗人萩.泥棒が室内に侵入する時、足音のしないように、足の裏の外側を使って歩くその足跡に、豆果の形が似ているというのでこの名がついた。」と《牧野日本植物図鑑》に解説されている。

さてさて、盗人(ぬすっと)の足跡って本当にそのようなものなのか確かめたく、宮城県警の中央警察署鑑識課に問い合わせると、「今の盗人は裸足でないので分かりかねます」との答えだった。これはその体験者でないと解らない解釈のようである。筆者のようなちょっとHは、ご婦人のブラジャーみたいとなるのだが。

“秋の木の実草の実展”のコーナーに「馬鹿コーナー」を設け、「お宅の地方では、このように衣服などにひっつく草の実を、なんて呼んでいますか」の質問ノートを置いたら、いっぱいその呼び名が集まった。「バカ、ヒッツキムシ、ドロボウ、ヌスット、タカリンボ…」と。

盗人萩の名はこのヌスットやドロボウの引っ付く豆果からと見たいのは、他人の家に忍び込んだことの無い者だけの見方だろうか?(そうだとすると、あの先生もあの方も、あいつもこいつも“泥棒の足跡”だと解説しているのは、みなその体験者かな?)


〔植物名入門〕各著者(50音順)プロフィールとこれまでのエッセイ

芦田 潔(社団法人日本おもと協会理事)
プロフィール伝統園芸植物「オモト」の銘を考える

岩佐 吉純(岩佐園芸研究室主宰)
プロフィール園芸植物の命名考

荻巣 樹徳(ナチュラリスト):準備中

乙益 正隆(ナチュラリスト・植物方言研究家)
プロフィール植物方言採集秘話

金井 弘夫(国立科学博物館名誉館員)
プロフィール植物の名前を考える

管野 邦夫(仙台市野草園名誉園長)
プロフィール花の名前にご用心

北山 武征(財団法人公園緑地管理財団副理事長)
プロフィール緑・花試験うらばなし

許田 倉園(元:玉川大学教授)
プロフィール植物名に現れた台湾の固有名詞

坂崎 信之(植物プランナー)
プロフィール謎の植物誌

佐竹 元吉(お茶の水女子大学 生活環境研究センター)
プロフィール生薬名の混乱

下園 文雄(元:小石川植物園)
プロフィール小石川植物園に渡来した植物たち

杉井 明美(園芸家)
プロフィール気になる園芸品種

立松 和平(作家)
プロフィール花の名前

辻井 達一(北海道環境財団理事長)
プロフィールアイヌ語起源の植物名

豊田 武司(小笠原野生生物研究会)
プロフィール小笠原の植物

中村 恒雄(造園植物研究家)
プロフィール園芸樹木の変わりものたち

福屋 正修(ナチュラリスト)
プロフィール植物名学入門

藤本 時男(編集者・翻訳家)
プロフィール「聖書の植物」名称翻訳考

三上 常夫(編集者・翻訳家)
プロフィール造園植物の名前の混乱

水野 瑞夫(岐阜薬科大学名誉教授):準備中

山本 紀久(ランドスケープアーキテクト)
プロフィール実と名が違う造園植物

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