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第11回 川島榮生の《ヤマアジサイの世界》

鎌倉アジサイ同好会 会長 前川英吉

ヤマアジサイの鉢栽培をはじめて約20年が経つ。2005年に鎌倉アジサイ同好会に入会してからさまざまなご縁をいただき、現在会長を務めさせていただいている。

楚々として詫び寂びを感じさせるヤマアジサイと出逢ってから、多くの仲間に恵まれたお陰で私の庭をアジサイ鉢が占領し、隣の庭にまで侵食して今やその鉢数も正確ではない。今回、ヤマアジサイを通じて出逢った、最もセンセーショナルな人物・川島榮生について記録を残したい。ヤマアジサイ研究家の川島榮生は2010年入会の同会会員である。

川島榮生の功績

川島は、まさしく日本のアジサイ界に大きな波紋を投げかけた功績者だ。その功績はズバリ、以下の三点にまとめられると思う。

  • 国内で初めて「園芸アジサイ」なる総称名を作った。

    2010年アボック社発行の『アジサイ百科』、また2011年『鎌倉のあじさいと名花名木めぐり』の連作において、川島は「ハイドランジア」「西洋アジサイ」などの混乱した呼称を中止し、それらの不明品種を一括して「園芸アジサイ」と総称した。つまり、それまで出自などが不明瞭だったたくさんの交配種・輸入品種などを、一つの総称に束ねて系統をわかりやすくしたのである。園芸アジサイとは言い得て妙。園芸畑に遊ぶ私たちにとって、実にわかりやすい便利な呼称である。

  • アジサイ属の種以下のランクに全て「5桁の固有の番号」(前2桁は「種と品種およびそのグループ」番号、他の3桁は「品種番号」を意味する)を付し、アジサイ属の分類や整理を容易にした。

    この番号は『川島インデクス』という。世界に通用する博物学的整理方法だ。

    日本のアジサイ属はきわめて多様だ。川島は、2,000種類以上ともいわれるこのアジサイ属をヤマアジサイ(Hydrangea serrata)、ガクアジサイ(Hydrangea macrophylla f. normalis)、エゾアジサイ(Hydrangea serrata var. yesoensis)、種間・属間雑種、コアジサイ亜節などの分類的な特性、つまり花の説明(花形、花色、花の大小、弁の重なりや形、一重と八重)、開花時期、高さに至るまで徹底的に解説している。さらには産地、自己の初確認の日や場所、また、購入の難易度(プラントファインダー)までも取り上げている。これによって実用的な「アジサイ属のモノグラフ」となった。

    川島は先にこれらの資料を「ヤマアジサイ」というサイトにまとめている。写真とともに誰もが自由に検索・閲覧できる。

  • 国内に自生する多様なヤマアジサイ(今では2,000種類もの野生品が知られている)を天然分布域によって大きく2つに区分し、巻頭の彩色分布図で示した。他にもアジサイ科植物の最新の天然分布図を計6図収録しているのが画期的である。

    ヤマアジサイ(Hydrangea serrata)という特異な種は、日本列島の広い地域に分布し、大きな変異がある。これらの変異品は毎年何十種類も発見され、市場に出回っている。最近の発見域は四国4県にまたがる石鎚山系と北九州(豊後)が多い。川島はこの2,000をも超えるヤマアジサイ品種群を「東日本型」と「西日本型」の二つに大きく分けた。

    「東日本型」は、関東・東海地方の明るい山地に分布し、両性花と装飾花が白色の個体群。

    対する「西日本型」は、近畿以西の明るい山地に分布し、両性花と装飾花が青色の個体群である。

    そして、この東日本型と西日本型には分布境界があり、その境界ラインを岐阜県・滋賀県・三重県にまたがる鈴鹿山脈である、と線引きした。

    さらには済州島・朝鮮半島南部に分布する青花の個体群を「ヤマアジサイ韓国型」、宮崎県中央山地の青花の個体群を「ヒュウガアジサイ」、鹿児島県・宮崎県の青花の個体群を「ナンゴクヤマアジサイ」と位置づけた。

    川島は神奈川県内で長年、生物学の教諭を務めていたが、早くからヤマアジサイに興味をもち、全国各地を歩いた。退職後の2002年頃から本格的に歩きはじめ、これをライフワークと決めた。フィールドワークは基礎文献調査などの事前準備をふまえて、現地を「じかに見る」植物学の実践調査である。観察地点は北海道知床半島、岩手県台温泉周辺、秋田県田沢湖高原、長野県黒姫高原・奥山田温泉(山田牧場)・蓼科高原・志賀高原・軽井沢・駒ヶ根高原、富山県美女平、群馬県谷川岳、栃木県那須高原・日光、神奈川県横浜・鎌倉・観音崎・箱根・真鶴半島、島根県津和野、鹿児島・宮崎県境のえびの高原などに及ぶ。川島は、標本こそもたなかったが、長期にわたるフィールドワークで何度も現地に赴いてデータを集め、考察を深めるなかで養った観察眼をもって、この大胆な仮説を立て、確信を得たのだと思う。

私は、植物学の研究者でも学者でもないが、上記三点の見解が川島学説のもとになっていると考えた。川島がヤマアジサイを見る「視座」であり新しい「知見」だと思っている。『アジサイ百科』の中に初筆・詳述されているから、関心のある方にはこうした視点からの再読をおすすめしたい。

ところで、文尾になったが、川島には強力な影の協力者がお二人いたことを忘れてはならない。

お一人は太田哲英。太田はわが鎌倉アジサイ同好会の元会長で園芸分類の研究家。 あとお一人は池田正宏。池田は同会の実質的な創設者の一人で、日本アジサイ協会の現副会長。本職は鎌倉・鶴岡八幡宮の元禰宜で現在は横浜・伊勢山皇大神宮の宮司さまを務めておられる。このお二人こそが川島インデクス出版の仕掛人であり、オリジナリティに富む川島学説の支持者であったと聞いていると、特記しておきたい。

鎌倉アジサイ同好会が主催する「日本の自生アジサイ展」は、毎年5月末の一週間、大船のフラワーセンターで行われ、約6,000人以上が来場する。期間中は全会員が当番で案内と展示の説明を行うが、川島が居ると会員の安心感が違う。中にはかなり専門的で難しい質問をされる方もおられる。困ったときの川島頼みである。

現在、川島インデクス『アジサイ百科』は同会のバイブルである。全会員が携帯し、品種名や特徴を確認する。そして、新品種と思われるヤマアジサイ・エゾアジサイを見つけると真っ先に川島に連絡する。また、育苗・生理・生態にも詳しいので、私が珍しい品種を新しい栽培方法によって一気にふやす方法として葉挿しを試みた際にも、あたたかいアドバイスをいただいた。また、役所やメディア向け資料にも決まって川島の写真や文章を活用させてもらっている。「国内のアジサイ鑑賞場所ベスト10」をたずねても即答される。会員40名の頼れる存在である。

極めつきは6年前の夏のこと。

「国内で自生しているエゾアジサイを見たいのですが」と相談したところ、「長野県高山村の山田牧場が良いですよ。時期は7月25日です」と、日付まで即答。お言葉どおり、実際その日に散策すると青や紫・白・ピンク色の大輪の変りものエゾアジサイの無銘品種が咲き乱れていて(こうした変わりものが一か所に集結しているホットスポットを園芸学的に「坪(つぼ)」という)、大いに驚き感激した。まさに川島は根っからの「フィールドワーカー」なのである。

 

「日本の自生アジサイ展」は鎌倉市後援のもと2000年から開催され、今年で20回目を迎えた。国内に自生するヤマアジサイを中心に新品種を含め毎年200種類以上の品種を展示する。会員が育てた5号鉢仕立てのヤマアジサイを中心に、北海道から沖縄までの県別・品種名とともに紹介する。期間中は展示品種の説明やアジサイの手軽な育て方の講習会を行っている。

特に見て感じていただきたいのは、自生の変異アジサイの魅力である「あやうくはかない野趣」と「そこそこの華やかさ」。古来より茶花として一輪・一鉢を活ける。これが日本の伝統的な美意識である「侘び」「寂び」の奥深さとつながり、長い間親しまれてきた。

また、鎌倉と神奈川県内外の寺社への挿し木苗の寄付・植栽、東日本大震災や熊本地震などの復興支援協力事業として被災地へのアジサイ苗の提供・植栽する活動を行っている。

さらに今年は古都鎌倉の古道整備として植栽、地域の夏祭りへのアジサイ紹介、市内交通機関へのアジサイや写真の展示を行った。地域の方々に少しでもアジサイのよさ・親しみやすさを理解いただけるよう活動している。

筆者紹介

前川英吉

自称趣味家。1949年千葉県市川市生まれ。1971年玉川大学農学部 農芸化学科卒業。
1971年より水溶性高分子薬剤製造販売のハイモ株式会社に勤務し、新規商品システム開発室長、湘南研究センター技術研究所所長、新規市場開発営業部部長、営業企画部参事を経て2012年退社。鎌倉アジサイ同好会には2005年に入会し、2010年より同会役員、2015年同会副会長、2019年から同会会長、現在に至る。趣味は、幼少よりのレース鳩の飼育、小動物の飼育、絵画、版画制作、海釣り、渓流釣り、楽器演奏、皐月・雪割草・エビネ・ヤマアジサイなどの園芸植物栽培、熱帯魚飼育、国内の山城巡り。

筆者近影

▲ 筆者近影

『アジサイ百科』書籍紹介

アジサイ百科

ISBN978-4-900358-67-6 C3045\11429E
定価 本体11,429円+税

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残部僅少

新花材、新苗約900品種の入手先「アジサイファインダー」付
主に日本産約2000品種収載。

ヤマアジサイ研究の第一人者・川島榮生のライフワークを集約した「日本アジサイ品種名索引」。アジサイ原産国・日本でも初めての写真2,000枚超収録のモノグラフとなった。新花材、新苗の入手先付でアジサイ市場の全貌を収録。日本アジサイ協会、鎌倉アジサイ同好会や国内有数の生産者から全面協力を得て編纂。


川島榮生 川島榮生(かわしま えいせい) 園芸研究家
1942年 東京都生まれ。鎌倉アジサイ同好会会員。
1965年 東京農業大学農学部卒。 1965-2002年 市立緑ヶ丘高等学校(横須賀市)に生物教論として勤務。 2002年の退職の頃からアジサイを対象にしたフィールドワークを始める。観察地点、北海道知床半島、岩手県台温泉周辺、秋田県田沢湖高原、長野県黒姫高原・奥山田温泉山田牧場、蓼科高原・志賀高原・軽井沢・駒ヶ根高原、富山県美女平、群馬県谷川岳・日光、栃木県那須高原、神奈川県横浜・鎌倉周辺・箱根・観音崎・真鶴半島、島根県の津和野、鹿児島・宮崎県境のえびの高原など。
2002年 ホームページ「ヤマアジサイ」をアップして現在に至る。


太田哲英 太田哲英(おおた てつえい) 園芸研究家
編集協力および「欧文化」「アジサイファインダー」
作成

本書の内容

口絵/アジサイ番付●アジサイ科植物48種類のカラー分布図
図鑑/ヤマアジサイ約900品種●エゾアジサイ約140品種●ヒメアジサイ6品種●ガクアジサイ約70品種●園芸アジサイ450品種など約2000品種。 解説/分類と体系●栽培と文化●Q&A
索引/[日本語索引][ローマ字索引][学名索引]●入手先索引[アジサイファインダー] [2010/06/10]

本書の体裁

●A5判●上製●総656頁(カラー544頁)

Aboc無料公開コンテンツ Web植物辞典花ペディア®にデータ収録

『鎌倉のあじさいと名花名木めぐり』書籍紹介

鎌倉のあじさいと名花名木めぐり

当社追跡のアジサイ本の第三作。アジサイの名所とされる鎌倉。では、実際どこで、どの品種が見られるのか?アジサイ博士川島榮生による現地調査3年の集大成。最も品種管理のすぐれた13寺社のアジサイを品種植栽マップと美しい写真500枚で紹介。QRコード付「鎌倉100品種図鑑」は当社初の試み。スマホで写真や情報を見られる最詳のアジサイガイドブックに仕上げた。

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今まで出版されなかった、「あじさい博士」に案内してもらえる
鎌倉ガイドブック

(社)鎌倉市観光協会 推薦

川島榮生(案内人)、太田哲英(指導)、池田正宏(監修)
B6判 / 並製 /オールカラー 192頁 / 定価 1,200円+税 / ISBN978-4-900358-69-0

[2011/05/15]

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