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第十三話 植物園での植物研究

植物園で行われる植物研究の主体は、なんといっても世界中の植物のインベントリー、つまり植物の総合的な研究調査である。

インベントリーという英語は、辞書には「財産目録」と出ている。インベントリー研究とは、ひと口でいえば、世界中の植物の戸籍調べで、それぞれの植物を系統分類して整理し、さらに生理・生態・細胞遺伝学的な性質から用途まで調べて、これらのデータを植物標本とともに集積し、必要なときにいつでもその情報が引き出せるようにすることである。

だから植物園は、学生の夏休みの宿題の植物標本の名前の付け方についての問い合わせから、植物の専門家や植物産業関係からの問い合わせに至る広範な質問に答える「万事承り所」の役割を担うことになる。

学名は植物の「姓と名」を表わす

植物研究でまず必要なのが植物の名前である。植物園の植物の名札には、必ず植物の学 名がついている。

学名とは、植物の類縁関係に従ってつけられた学問上の名であり、植物学者はもとより、園芸家、農林業者、薬学関係その他、植物に関係のある人たち、植物好きの人たちの間でなら、全世界で通用する唯一の名前である。

たとえば、日本語のリンゴは、中国では蘋果、英語ではapple、ドイツ語ではApfel、フランス語ではpomme、スペイン語ではmanzanaというふうに、世界各地で著しく異なるから、全世界に共通な学名であるMalus pumilaは、大変便利でかつ重要である。

学名は、ラテン語を用いてつけられ、だいたい三つの単語からできている。例えば、パンジーの学名はViola tricolor L.だが、最初のViolaは属名で「スミレ属」の意味、パンジーの属する属を示し、次のtricolorは「三色の」を意味し、種小名(種名)を表す。最後のL.は、命名者のスウェーデンのリンネ(Carl von LinnéまたはLinnaeus)の名の略称である。

植物名を学名でよぶときは命名者の名は省き、リンゴのMalus pumilaやパンジーのViola tricolorのように属名と種小名の二つでよぶ。私たちの姓と名に似ているこの「二名法」は、リンネが初めて使用したので、「リンネの二名法」といわれる。

時間がかかる植物の分類研究

植物のインベントリーを行なうときには種々の研究方法があるが、ひとつの方法は、ある地域を対象にして、そこに生えている植物のすべてを調べる植物誌(フロラ)的研究である。

英国王立キュー植物園の学者は、インド亜大陸、オーストラリア、熱帯アフリカなどの植物を調べて多くの植物誌を書いたが、そのなかのひとつで、J・D・フッカー博士と彼の協力者が作り上げた『インド亜大陸植物誌』は1875年から1895年にかけて出版された全七巻にわたる大著で、現在でもそれに代わる新しい南アジアの植物誌はない。

そのころ、ドイツのベルリン・ダーレム植物園では、世界の植物学の泰斗といわれるH・G・A・エングラー教授が中心となり、世界中のあらゆる植物を科ごとにまとめる単行論文式の集大成『植物界』(Das Pflanzenreich)の編集を始めており、その第一巻が1900年に刊行された。その後、世界中の植物分類学者が協力してこの事業に当たっていて、現在なお刊行中である。

熱帯アメリカとアジアに力を注ぐ

ニューヨーク植物園では、有名なA・クロンキスト(Cronquist)博士が最近、世界の植物の科の系統について新しい見解を発表し、今まで長く使われてきたエングラー式の分類系と異なった体系として注目されている。

植物誌の研究は、初代の園長N・L・ブリットン(Britton)教授のときに西インド諸島から熱帯アメリカの植物の研究が始まり、その後を主席研究官であったB・マグアイア(Maguire)博士が引き継いで50回以上の探検隊を出した。その成果は『熱帯アメリカ植物誌』として現在十数巻刊行されているが、最終的には百二十巻以上になる。

ニューヨーク植物園のアジア植物の研究は、第二代の園長でハーバード大学のアーノルド樹木園の園長もつとめたE・D・メリル教授のときに、中国南部、インドシナ、フィリピンという東南アジア中心の植物探査とその収集標本の同定研究から始まった。この仕事はしばらく中断していたが、1969年ごろから私が主席研究官として引き継ぎ、1977年にアジア部が創設されて、私が初代部長に推されてから、『台湾植物誌』全六巻をはじめ、『スリランカ植物誌』『タイ国植物誌』『インドシナ植物誌』『インド亜大陸植物誌』などの計画に対し積極的な協力・援助を行い、あわせてアジア地域の有用植物の調査も開始した。

私はこのほかに異なった地域で種々に利用している食用植物、繊維植物、薬用植物などを調べ、作物やその地方変種、その原種なども調べながら、朝市などの市場調査も行った。食べ方など他の分野にもまたがるから、植物学者、民族学者、植物生化学者の協力チームで行った。

ニューヨーク植物園の民族植物学者のクリスチーヌ・パドック嬢は、ときどき南米の奥地やボルネオのカリマンタンの奥地へ行き、現地人と生活を共にしつつ、彼らが利用している植物を徹底的に調べ、植物標本、種子、データを持ち帰る。そして、副園長のG・T・プランス(Prance)博士と私が植物の同定をし、生化学者のF・C・シーマン博士やM・リチャードソン博士が化学分析をする、といった具合に研究は進められていた。

『植物園の話』コンテンツ一覧▼ 目次(青字)をクリックすると、各文をご覧いただけます

本書まえがき

第一話ニューヨーク植物園
第二話古代エジプトに逆上る歴史
第三話温室は華麗なシンボル
第四話もうひとつの顔・・・・・・花壇と並木
第五話さまざまな「ガーデンズ」
第六話特殊な植物園
第七話ニューヨーク植物園の四季
第八話植物園の舞台裏
第九話植物園と大学
第十話植物を集める
第十一話植物を保存する
第十二話植物の情報ストック
第十三話植物園での植物研究
第十四話社会生活とのつながり
第十五話教育的な役割
第十六話憩いの場として
第十七話娯楽に公開されるケース
第十八話両陛下をお迎えして
第十九話菊人形と菊花展―第二回目の特別行事
第二十話ニューヨーク植物園のゲストブック
第二十一話ヨーロッパの植物園
第二十二話アジアの植物園
第二十三話北アメリカの植物園
第二十四話中・南米の植物園
第二十五話オセアニアとアフリカ
第二十六話植物園の在りかた

本書あとがき

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