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第七話 ニューヨーク植物園の四季

三十四年前、私がニューヨーク植物園へ勤務し始めたころ、最も印象に残っている温室の行事は、三月下旬に催されるイースターのフラワーショーであった。

「イースターショー」とよばれるこの催しでは、展示温室の中にテッポウユリを十字架の形に密植し、その周囲に赤いチューリップを植えて、赤地に白い十字の花壇をつくり、その周りに常緑の小低木を配していた。

その後、園芸主任が代わったためか、形式が変わり、黄色いラッパズイセン、白いテッポウユリを中心として、これに早咲きのツツジをあしらい、ツバキやシラカバなどの樹木も交えた庭園をつくり、ローマ風の円堂や大理石製のベンチなどを配して、ローマ風の楽園を象徴する庭園をつくったりしていた。

温室に花の舞台を演出

このような、季節を追って催される季節フラワーショーは、展示温室の中の展示室で次々 と行われる。短いショーは二、三週間、観葉植物中心の長いショーでも一、二カ月位経つと新しいショーと入れ替わる。そのたびに一、二日かけて、植物の大移動が行われる。また、演劇の大道具に相当する背景のセットとか、池、築山なども入れ替えられる。

したがって、フラワーショーは、単に園芸師の育てた花が並べてある、といったものではない。庭園設計士とデザイナーが全景を設計したあと、植物園の大工さんが大道具を準備し、ランドスケープ・ガーデナーが築山や歩道、池や小川をつくり、最後に花がトラックで運び込まれる。花は、前もって園芸師が増殖温室で育てておいたものである。絢爛たるショーも、いくつかのチームの工夫と努力による、チームワークの結晶なのである。

世界各国のフラワーショー

春の季節ショーとして、ニューヨーク植物園では、宗教的なにおいのあるイースターショーに続いて、晩春は球根類中心の「バルブ・ショー」であるが、1973年には「オランダ球根ショー」がオランダの花卉産業業者、オランダ政府観光局の協賛で催された。風車を置き、その周りに、ちょうどキューケンホーフの球根園に見られるような赤紫色のムスカリ、各種のスイセン、オランダならではの多くのチューリップの品種が飾られた。

また、1975年のこの時期には、英国最大の園芸植物園であるチェルシー植物園への表敬の意味で、「チェルシーへの敬礼」と名づけた、パンジー、デージー、プリムラ、ワスレナグサなどの白と青の二色を主体とする春の草花を中心とする英国式のショーが行われた。その翌年はドイツのショー、翌々年は中国のショーという具合に、世界各国のフラワーショーが行われたのである。

初夏には、恒例のラン展が催される。植物園で育てたランのほかに、米国各地のランの会の会員が自慢のランを持ち込み、日本のキク展のようなコンテストが行われる。ラン協会賞をはじめ、種々の賞が授与される。

このほか、夏には、男性的な観葉植物のショーがあり、モンステラやフィロデンドロンなどの異様なつる植物、奇異な感じのサトイモやクワズイモの仲間、ベゴニア類、ブロメリア類が中心となる。秋はキク展が人気をよび(第十九話参照)、冬にはクリスマス・フラワーショーがある。クリスマスショーの中心は、何といっても赤と白のポインセチアで、ポインセチアの増殖は秋口から増殖温室で始まっている。

ニューヨーク植物園の野外の四季

熱帯の植物園には、年間を通して濃く深く茂った緑の中に、常時ランの花や、香水の香りのある各種の花が咲いているジャングルの印象があるが、ニューヨーク植物園のような大型の温帯の植物園では、四季の移り変わりがはっきりしていて、実に楽しい。

雪解けの春一番に咲く花は、ヤナギ類、シラカバ類、ハンノキ類の猫の尾のような形の花序で、黄色い花粉をたくさん飛ばす。このころ、冬眠から覚めたリスが餌を求めて芝生に現れてくる。園内のサクラも四月の中旬に開花するが、同じころチューリップなどの草花が満開となる。年中行事の大掃除が行われ、前の国連大学学長のヘスター園長以下、全職員が清掃をつとめ、冬の間放置された園内の整備もあわせて行われる。

五月の植物園は最高に美しい。モクレン園の木々が、いっせいに花をつけ、一面桃紫色となる。自然林内の白いドッグウッドの花が満開となるころ、その下植生の各種のツツジやシャクナゲ類もいっせいに開花し、フジの花も咲く。花と緑を求める入園者の数が最高となる。

六月から七月は、一時、花の端境期になる。八月に入ると、コスモス、マリゴールド、トリカブト、デルフィニウム、オダマキなどの花が秋の近いことを知らせる。

ニューヨーク植物園の自然林は、構成植物がほとんど落葉樹で、秋にはニレやシラカバ類の黄色と、カエデ類の赤や橙色、ハンノキやカバノキ類の赤褐色がそろって、一面に燃え立つような情景になる。紅葉狩りに訪れる人が多い。

落ち葉が降り積もるころ、がさごそと音をたてて走り回るリスは、冬に備えて餌をむさぼり丸々と肥え、毛も長くなって冬の装いとなる。雪が降って白一色の植物園、温かく灯のついた大温室、葉の落ちた褐色の林、大きな黒い岩、植物園は一年じゅうで一番静かな時を迎える。

落ち葉が降り積もるころ、がさごそと音をたてて走り回るリスは、冬に備えて餌をむさぼり丸々と肥え、毛も長くなって冬の装いとなる。雪が降って白一色の植物園、温かく灯のついた大温室、葉の落ちた褐色の林、大きな黒い岩、植物園は一年じゅうで一番静かな時を迎える。

『植物園の話』コンテンツ一覧▼ 目次(青字)をクリックすると、各文をご覧いただけます

本書まえがき

第一話ニューヨーク植物園
第二話古代エジプトに逆上る歴史
第三話温室は華麗なシンボル
第四話もうひとつの顔・・・・・・花壇と並木
第五話さまざまな「ガーデンズ」
第六話特殊な植物園
第七話ニューヨーク植物園の四季
第八話植物園の舞台裏
第九話植物園と大学
第十話植物を集める
第十一話植物を保存する
第十二話植物の情報ストック
第十三話植物園での植物研究
第十四話社会生活とのつながり
第十五話教育的な役割
第十六話憩いの場として
第十七話娯楽に公開されるケース
第十八話両陛下をお迎えして
第十九話菊人形と菊花展―第二回目の特別行事
第二十話ニューヨーク植物園のゲストブック
第二十一話ヨーロッパの植物園
第二十二話アジアの植物園
第二十三話北アメリカの植物園
第二十四話中・南米の植物園
第二十五話オセアニアとアフリカ
第二十六話植物園の在りかた

本書あとがき

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