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第一話 ニューヨーク植物園

ニューヨーク植物園(The New York Botanical Garden)は、ニューヨーク市北部のブロンクス区にある。

四月ともなると、園内のブロンクス川を抱く丘に、世界中から集められ植栽されたモクレン類の花が色とりどりに咲き、五、六月には数百種のツツジとシャクナゲが花を開き、丘の斜面はスイセンの花で埋まる。

この植物園は、面積270エーカー(1.09平方キロ)で、その本園に加えて、市の北郊100キロのところには3,000エーカー(12.14平方キロ)の付属カリー樹木園もあって、総職員数196人、年間予算800万ドルと、小さな大学一校に匹敵する規模をもつ。ニューヨーク市立大学と研究・教育の面で密接な関係があり、その建物や敷地は市に属し、市の公園局からの助成金もあるが、非営利教育研究法人と云われる準市立(第三セクター方式)の植物園で105年の歴史がある。

現代の植物園の役割は、第一に生きた植物を系統的に集めて育て、生きた標本として保存すること、第二に植物科学の研究・教育・普及活動を行うこと、第三に植物の美しさを通して植物を愛好する市民へ憩いの場所を提供することにある。

この役割のすべてを果たす機能を備えた大型の植物園を総合植物園と云い、その一部の機能をもつ植物園を特殊植物園、第三の憩いのためだけの植物園を植物公園、フラワーパーク、あるいは庭園と云って区別する。

また、植物園と緑地公園の違いはどうかと云うと、植物園に栽培される植物は、それぞれに植物学的または園芸や造園上の学術価値や意味のある植物で、一般にその来歴なども知られた植物であるのに対して、緑地公園では比較的栽培し易く、見て美しい植物とか、木陰を作ったりするのに好都合な植物などを効果的に植え込み、人びとが市街地の緑を楽しむ目的の場所で、植物学的、園芸学的な価値にはこだわらないと云うことである。

世界の三大植物園として知られるイギリスの王立キュー植物園、ドイツのベルリン・ダーレム植物園、それにアメリカのニューヨーク植物園は総て総合植物園である。

ここでは、ニューヨーク植物園の例のように、総て大学と共同体を構成して、植物分類学・形態学・生態学や、有用植物学のように、現在大学プロパーで余り教えられる教授が寡くなった学問分野の大学院レベルの専門教育と人材育成が行なわれている。私もニューヨーク植物園の首席研究官・アジア部長として、それと同時にニューヨーク市立大学大学院の教授であり、大学教育と植物園での研究と管理業務の全部に携わって来たのである。

また、特殊植物園の例としては、米国のロングウッド・ガーデンと英国のウィズレー園芸植物園やオランダのキューケンホーフ・ガーデンがあったり、武田薬品工業株式会社京都試験農園(薬用植物園)、さらに大型の樹木園の例では埼玉県の(財)公園管理財団・武蔵管理センター(武蔵丘陵都市緑化植物園)などが挙げられよう。

盛んな研究・教育活動

ニューヨーク植物園の活動は、学術研究と大学レベルの教育、園芸、一般教育と普及、事務の四つの部門に大別できる。

教育活動は、専門的な植物研究と大学院レベルの教育研修活動との両面をもち、園内の四棟の研究棟で行われる。この部門の職員は、研究職員と技術職員で構成され、研究職員は管理研究官(キューレーター)といい、大学院を修了して博士(Ph. D.)の学位を得た人びとで、日本の大学四年卒業の所謂学芸員より学術水準が高く、一般の大学の研究者と同様に、研究や教授活動をする。

植物園での教授活動というと奇異に思われるかもしれないが、ニューヨーク植物園は市立大学と提携して一体となり、植物園の管理研究官の一部は市立大学の教授を併任して大学院へ出向し、逆に大学からも植物園の管理研究官として出向するなど、自由な研究交流が行われる。市立大学の植物学系大学院は、これら双方の併任教授によって構成され、大学院生への授業・研修が行われる。このような形態は、英国のキュー植物園やドイツのベルリン植物園においても見られるものである。

ニューヨーク植物園の研究活動の主力は、現在、主に中南米と北米に向けられ、とくに熱帯アメリカで活発な野外調査活動を展開している。旧世界の植物研究としては、私が同園アジア部長の職にあった時には、東南アジア、中国、東アジアと北米に亘る古第三紀要素のフロラなどの研究も行なわれていた。毎年、教授、研究員、大学院生からなる植物探検隊を派遣し、生きた植物、種子、標本を集めて研究している。

標本館は、植物博物館棟の四階分を占め、580万点の標本があり、毎年さらに十万点ぐらいずつ増えている。植物図書館には、六十万冊余の本と、世界中の植物関係の定期刊行物が備えてあり、アメリカ大陸最大の植物図書館となっている。

園内には、実験所が二つある。リーバーマン実験所では、光学・電子顕微鏡などによる組織と細胞レベルの形態研究、染色体やDNAの研究、ハーディング実験所では、生化学や生理学的研究が行われる。有用植物の研究では、全世界の植物資源の調査研究を行うほかに、税関、農業省、警察局などの政府機関や、民間企業などに有用植物の情報資料を提供したり、研究委託を受け、また共同研究にも応じている。

園芸部門は、植物の増殖・育成用と研究用を兼ねる温室(プロパゲーション・レンジ)、 圃場、一般公開用の展示温室などを管理する。園内には、主として高山植物を植えたロックガーデン、薬草園、水生植物園、樹木園などのほかに、二百年前のニューヨークの自然林をそのまま残した自然植物園がある。樹木園のなかにある松柏園、モクレン園、ツツジ・シャクナゲ園は、とくによく整備されている。

教育・普及部門の活動は、大学院生に対する専門教育以外の一般教育と研究普及活動を含み、植物教養講座を成人学校として開講している。植物園付属の園芸学校は園芸士を養成するが、これは教育部と園芸部の協力で運営される。博物館内の展示や展示温室内の展示も、これら二つの部の共同運営で行われる。

民間の協力によって運営

ニューヨーク植物園の財源の大部分は、民間の団体や企業、篤志家などの寄付金と公益財団や政府からの研究助成金に頼っている。ニューヨーク市からの助成金は総予算の約30パーセント以下と少なく、しかも年々減少しているのが実情である。この財源確保のために広報活動は重要な働きをしており、管理研究官も自ら資金集めに奔走し、運営に直接かかわっているところは、官公立の植物園とは大いに異なるところである。

『植物園の話』コンテンツ一覧▼ 目次(青字)をクリックすると、各文をご覧いただけます

本書まえがき

第一話ニューヨーク植物園
第二話古代エジプトに逆上る歴史
第三話温室は華麗なシンボル
第四話もうひとつの顔・・・・・・花壇と並木
第五話さまざまな「ガーデンズ」
第六話特殊な植物園
第七話ニューヨーク植物園の四季
第八話植物園の舞台裏
第九話植物園と大学
第十話植物を集める
第十一話植物を保存する
第十二話植物の情報ストック
第十三話植物園での植物研究
第十四話社会生活とのつながり
第十五話教育的な役割
第十六話憩いの場として
第十七話娯楽に公開されるケース
第十八話両陛下をお迎えして
第十九話菊人形と菊花展―第二回目の特別行事
第二十話ニューヨーク植物園のゲストブック
第二十一話ヨーロッパの植物園
第二十二話アジアの植物園
第二十三話北アメリカの植物園
第二十四話中・南米の植物園
第二十五話オセアニアとアフリカ
第二十六話植物園の在りかた

本書あとがき

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