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ニューギニア調査余録

昨年、西ニューギニアのゲールフィンク湾に面する地方の一部を踏査して来た。帰還以来蒐集材料について研究中であるが、浅学の上に参考にすべき文献や標本が少ないので思うように仕事ははかどらない。

従って、ニューギニアの植物について語るべき資格はない訳であるが、求めに応じて、自分の歩いてきた地方の植物概観とパプア現住民の利用する植物について簡単に述べてみたい。

現地を見て驚く事は、植物の種類と云い量と云い実に豊富な点である。海岸から直ぐに森林が始まって山頂までぎっしり樹木が密生している。船に乗って一日や二日海岸を航行しても、見る限りは緑の屋根であり、樹の海である。満支方面から内地に帰ると、誰しも樹木の多いことを感ずるのであるが、ニューギニアから帰ってきたときは内地は禿山だらけの感を深くしたことであった。そのホンの一部を切り拓いて原住民が原始生活をしているのである。私はある所を根拠地として、原住民の村々を訪ね、その付近の植物調査をやった。或る理由から奥地に行くことが出来ず、又村と村との間に路らしい路はないので一、二人のパプアクーリーを連れての調査は、船で村に行き、その付近を調査すると云う方法をとるより他に手段はないのである。従って私の歩いた範囲は海岸から数キロ以内、海抜二〇〇~三〇〇メートル内外の所に過ぎない。

海岸には珊瑚礁が発達しているので、大きな船は勿論岸近く入れない。三〇~四〇トンの小さい船でも水路を選んで近付かなければならない。しかも、それ以内は遠浅の泥地をなしている所が多いため、小さなボート或は独木舟によって干潮時を避けなければ岸につくことは出来ない。

海岸は紅樹林に始まる。紅樹林は、熱帯亜熱帯の海岸の波静かな泥深い所に生育する特殊の生態を有する植物群である。樹種は熱帯各地共通のものが多く、オオバヒルギ、フタバナヒルギ、ベニガクヒルギ、コバナノベニヒルギ、ヤナギバヒルギ、ホウガンヒルギ、コヒルギなどが見られる。このうち、優勢なものは、オオバヒルギ、ベニガクヒルギなどであり、それぞれ特徴ある気根を出し、それが相錯綜して、紅樹林の下は人も舟も入ることは出来ない。

気根には四型見られる。

  1. 一は懸垂根。主幹からタコノキのように懸垂する気根を出すもので、オオバナヒルギ、フタバナヒルギに見られる。
  2. 二は膝根。膝をまげたような気根を出し、干潮時には水上に現れる。例ベニガクヒルギ、コバナベニヒルギ。
  3. 三は直立根。土中の根から泥上に直立する気根を出す。オオバナヒルギ、ヤナギバヒルギに見られる。
  4. 四は板根。ホウガンヒルギに見られるもので、根が狭い板を立てたようになっている。

紅樹林のうちのある樹種は、胎生果を有するので知られている。胎生果というのは、樹上で発芽、発根する果実である。紅樹林の種類で胎生果を有するものは、オオバヒルギ、ベニガクヒルギ、コバナベニヒルギ、フタバナヒルギ、コヒルギなどであるが、中でもオオバヒルギでは、樹上で発根した幼根が長さ三〇~六〇センチメートルに達する。これが落ちて泥中にささったものが根づいて上部から葉を出し、立派な植物になるのである。

紅樹林は、その材は薪炭材として、また樹皮はタンニンの原料として利用されることは周知である。

紅樹林の内部、満潮時に僅かに海水に浸る所から、また紅樹林のない砂浜では貧弱な海浜植物群の内部から海岸林が始まる。海浜植物には、ナンヨウマメモドキ、シイノキカズラ、ゴバンノアシ、グンバイヒルガオなどが目立つが、一般に極めて貧弱で海岸林の単なる外縁をなしているに過ぎない。

海岸林として多く見られるものは、ヤラボ、ハスノハギリ、オオハマボウ、サキシマハマボウ、スオウギ、サガリバナ、ミフクラギ、キバナイヌジシャ、ハマナツメモドキ、モモタマナなどである。海岸からちょっと入った低地林は海岸林とはっきり区別はつかないが、パンノキ、タイヘイヨウグルミ、タイヘイヨウテツボク、インドシタン、バンリュウガン、フウセンアカメガシワ、ヤエヤマアオキ、ヤンバルアカメガシワなどが見られる。

海岸林のつきる所から海抜一〇〇〇メートルくらいまでは、所謂熱帯降雨林である。この森林は熱帯の代表的森林ともいうべきもので、高温多湿の山地に発達し、非常に多くの樹種から成り、密林とかジャングルとかいわれているものである。大体、数層の樹木群から成り、最も高い樹木は五〇~六〇メートルに達する。最下層は灌木、または小喬木で、アカネ科のコンロンカ属、ルリミノキ属、バンレイシ科のものが多い。下草としては、シュウカイドウ属、ホザキアヤメ属、コウトウクマタケラン属、キキョウラソ属、ノボタン科のものが多少あるだけである。蔓性の植物も割合少なく、トウの類、トウツルモドキ、ハカマカズラ属の類がある。森林の内部は暗いことは暗いが想像したほどでもなく、本に書いてあるほどでもない。また樹幹が多く立ち並んでいるにもかかわらず、下草が少ないため通過困難ということもない。といって方角が全くわからないのでパプア人の案内なしでは殆んど歩くことは出来ない。森林樹木の一般的性質として気がつくことは、幹の基部が所謂板根をなしていること、下枝の少ないこと、花や果実の極めて少ないことである。板根は、湿度の多い森林内に於て生理的に適応したためであるらしいが、種属を問わず多少ともその傾向を帯びるものが実に多い。下枝の少ないことは葉は生理上太陽光線を求めるために常に一番上の枝に多くつく、従って下部にあっても役に立たないからであろう。花や果実の少ないこと、これは熱帯では気温の変化による四季の区別がないため、温帯に於けるように、花の季節、実の季節というものはなく、種属そのものの性質によって花を開き、実を結ぶという風である。だからなかなか目立たない。目立たないのは、その上、花や実が高所につくためでもある。もっともある種属では、幹花、あるいは幹果といって、幹の下部に直接に花や実がつくものがあり奇異に感ずるものがある。

ある人は、この森林を形容して、柱のたくさん立ち並んだ家の下のようだといったが、確かに、延々とひろがった葡萄棚か梨棚の下をうんと暗くした感じである。暗いから草や灌木の生長が悪いのである。従ってここに生ずるものは陰地性の植物があるのみである。

この森林の一部が拓かれると、急に光線の量が多くなり、たくさんの灌木が密生し、通過困難な薮、即ちジャングルと成るわけである。

森林には蔓茎植物と着生植物が多いと聞いていたが、私の歩いた範囲では割合に少なかった。蔓茎植物では二、三のハカマカズラ属(マメ科)の奇妙な形態をしたものに目をひかれ、着生植物ではビカクシダの一種、オオバヒルギにつく蟻植物の一種、数種のラン科植物の類を見るにすぎなかった。

村々を歩き廻るうちに、パプア原住民及びインドネシア人の利用する野生及び栽培植物について多少調査したので次に簡単に説明を加えておく。名前はパプア語のものは少なく、殆んどマライ語が多いので、ここでいう土名は、その地方で普通に使っている名前という意味である。またパプア人の利用する植物は殆んど素材として使う場合が多いことを付記しておく。

家屋用

パプア原住民の家は、所謂掘立小屋である。丸太を地に立て、これに床と屋根の丸太を渡してロタン(籐)で縛りつけ、屋根はニッパヤシまたはヤシの葉で葺き、壁はガバガバ(サゴヤシの葉柄)でふさぎ、床は竹の一種、あるいはラテラソテ(ニボンヤシの皮)で張ったものである。屋根は切妻で、窓は殆んどない。床を高くするので、入口と地面には簡単な梯子がかけてある。家の材料には次の植物が用いられる。

  1. ロラロ。紅樹林の主要樹種。オオバヒルギ、ベニガクヒルギ、オオバナヒルギの総称である。真直な幹を家の骨組に使う。湿気に対する耐久力が強いので、杭、橋材にも用いられる。ロラロは上等の薪炭材となり、樹皮はタンニンを含むのでその原料はカッチ製造に重要である。
  2. キキル。テンニンカ科のロダムニア属の数種の総称で、材は極めて堅い。
  3. ゴシカンビン。アオギリ科のスオウギで材は蟻害に強い。
  4. カタパン。シクンシ科のモモタマナ(別名コバテイシ)で、材は緻密で耐久力が強く、樹皮はタンニンを含む。種子は食用になる。 
  5. チャンプール・ピナン。クスノキ科のクスモドキ属の一種。
  6. ジャンブ・ウータン。テンニンカ科のフトモモ属の数種の総称。果実は生食される。
  7. ブシ。マメ科のタイヘイヨウテツボク、及びその近似種の総称。材は耐蟻性が強い。
  8. ニッパ。ニッパヤシで、葉は屋根葺用として重要である。この葉を中軸から二つに離し、細い竹を芯にして二つに折り曲げ、ロタンの細く削ったもので綴じたものをアタップと称し、これを瓦のように重ねて屋根を葺く。ニッパヤシの果実は人頭大の集合果で、胚乳は食用となる。
  9. サゴ(またはサグ)。サゴヤシの大きな葉柄を乾燥したものをガバガバといい、壁をつくる。
  10. ニボン(またはニブーン)。ニボンヤシ属の一種で、幹の皮を厚く剥いで床に敷く。ラテランテという。
  11. ロタン。皮をはいで細く削り、ものを縛るのに用いる植物をすべてロタンというが、ふつうはトウの類や、トウッルモドキを多く使う。
独木舟用

海岸パプアの交通機関というよりも足は独木舟である。小は一人乗り用から大は四〇~五〇人乗りまでいろいろあるが、すべて一本丸太をくり抜いて多少の工作を施したものである。これに用いる樹種に次のものがある。

  1. ビンタングル(ピンタグール、ビンタンゴル)。オトギリソウ科のテリハボク(ヤラボ、またはタマナ)で独木舟用として優秀であるといわれ、建築材、器具材にも用い、種子から油をとる。
  2. ナンカ。クワ科のパンノキやパラミツなどで、器具材、建築材とし、果実は食用として有名である。
  3. パラ・ウータン。ニクズク科のニクズク属の数種である。

独木舟には転覆を防ぐために、外架を片側または両側につけるのが普通である。これには軽くて水に強い材木を使うが、ふつうは、センペというキョウチクトウ科のアルストニア属の一種の材が使われている。また他村に出かける時や改まった時は、舳先に飾板をつける。この飾板は軽くて軟かい材を使うが樹種はよくわからない。舟を漕ぐ櫂は丈夫な木材でつくる。その一つはオオハマボウである。

器具・家具用

パプア人の用いる家具、器具といっても、至極簡単な食器類が大部分である。サゴ澱粉をいれる容器、木鉢、サゴ箆、笊、畚、石灰入れ、ノッケンなどである。サゴ澱粉容器はサゴ澱粉を一時入れておくもので、サゴヤシの葉柄の基部を折り曲げて舟形にしたもの。木鉢は食器で、サゴ澱粉を湯で溶きポペダ(葛湯のようなもの)をつくるもので、軽くて丈夫な木でつくる。サゴ箆はポペダをつくるときかき廻す一種のしゃもじで、割合堅い暗褐色の木でつくる。種名は不明である。笊や畚に類するものは、ものを入れたり運んだりするもので、竹や籐を細く裂いたもので編む。時にはタコノキの一種の葉でつくった大形蓋つきの野菜籠も使われる。

ノッケンは背負袋の一種で、外出時に用いる。これはカユ・ノッケン(アオイ科のオオハマボウ)、或はカユ・ケナンガン(シナノキ科のウオトリギ属の一種)の靱皮繊維で編んだものである。大型のものは食料、食器、家財道具などを入れて持ち歩くが、小型のものはいわばハンドバッグで、ちょっとした外出に、煙草や石灰容器などを入れるもので、タコノキの一種の葉で粗く裏打ちがしてある。ノッケンをつくるのは女の仕事で、男は全然やらない。

石灰容器。南方の原住民は大概、ビンロウの果実と貝灰をキンマの葉とともに口中で噛む習慣があるが、この石灰を入れる容器をタンパットカプルールといっている。この容器は、多くは、ヤシの堅殼の上下を切り、木片で底と蓋をつけた太鼓形のもので、胴にはいろいろの模様を刻みつけ、蓋も形や彫刻に趣向をこらしている。大小、円形、角形、長短いろいろあって、手の込んだものはなかなか美しいものである。胴の部分はヤシの代りに竹筒や稀に角を使ったものもあり、ヒョウタンの一種の果皮を使ったものもある。 旅行用品の一つとしてタコノキの一種の葉でつくった合羽兼敷物がある。

繊維用
  1. カユ・ノッケンまたはカユ・ケナンガン。前にのべたようにノッケンをつくるほか繩もつくる。
  2. ガネモ。グネツム科のグネツム属のもので靱皮繊維で縄や綱をつくる。

尚、現在は殆んど見られないが、以前はパンノキ属の一種の樹皮を剥ぎ、水に浸して余分を除き、靱皮繊維をたたき延ばして一種の布をつくったという。

樹脂用

ダマール・ヒル。フタバガキ科のバチカ属の一種で、この樹脂を独木舟の内部に塗布する。

食用
一、野生植物
  1. ケドンドン。ウルシ科のスポソジアス属の一種で、果実と葉を食べる。果実は美味である。
  2. ガヤム。マメ科のタイヘイヨウグルミで種子を食べる。サモア島では主食の一つであるという。
  3. ジャンブ・ウータン(別名、ポイ、ビサイ)。テンニンカ科のフトモモ属の数種をいい果実を食べる。
  4. カタパン。シクンシ科のモモタマナで種子を食べる。
  5. チャンプール・ピナン。クスノキ科のクスモドキ属の一種で、果実を食べる。
  6. パラ・ウータン。ニクズク科のニクズク属の一種で種子にある仮種皮を食べる。
  7. トミトミ。イイギリ科のオオミイヌカンコで、果実を食べる。
  8. ガネモ。グネツム科グネツム属のもので果実を食べ、葉は野菜の代用として重要である。

その他、種属は不明であるが、モトア、ノナ、ゴリオプルなどの果実を食べる。

二、栽培植物
  1. サゴまたはサグ。ヤシ科のサゴヤシの幹からとる澱粉はパプア原住民の主食物である。十七、八年生の開花前の幹を切り倒し、縦に割って掻棒で髄をかき出し、水とともに装置に流せばカスは流れ去り、澱粉は底に沈澱する。これを乾燥して保存する。
  2. 普通は湯でといてポペダ(葛湯)として食べるが、遠出するときは堅くといたものをバナナの葉あるいはハナミョウガ属の葉で包み、大形のチマキ状のものをつくり焚火で焼くか、土製の鋳型に流しこんで火でやき、サゴレソベンをつくり携帯する。

    サゴ澱粉は、新しいうちは我々も砂糖を入れ葛湯にして食べられるが、古くなると一種の臭気がついて口に入らない。インドネシアではこの澱粉で煎餅のようなものやプディングなどをつくる。サゴヤシは栽培もするが、多くは野生のものを利用する。

  3. カラパ。ヤシ科のココヤシで、サゴヤシに次いで重要である。種子の水は飲用、胚乳は食用となし、胚乳を乾燥したのがコプラで、重要な輸出品である。外果皮の繊維質は縄などをつくり、葉では屋根を葺き、若い花序柄からアルコール飲料をつくるなど用途が多い。
  4. カスビ。トウダイグサ科のキャッサバである。根茎にふくまれる澱粉を食用とする。
  5. バタタス。ヒルガオ科のサツマイモの一種で、葉が深く掌状に裂ける。イモは丸みをおびたものが多く、芽先きは野菜になる。カスビとバタタスは山豚の大好物で、所によっては大被害をうけるので作っても無駄だという村もある。
  6. バヤム。ヒユ科ヒユ属の一種で、芽先きを野菜にする。美味である。
  7. バワン。ユリ科ネギ属の一種で、赤と白の二品種があるが、食べる機会がなかった。
  8. カチャン・パンジャン。十六ささげ。
  9. カチャン・イジョウ。緑豆。
  10. カチャン・タナ。ナンキンマメで、小粒で丸みをおびたもの。
  11. ピサン。バナナの総称で、果樹として一番よく栽培される。マス、アンボン、スス、ラジャ、スパトウなどの品種がある。マスは小形で金色に熟し、芳香があり極めて美味である。アンボンは大形でやや細長く、熟しても黄色にならず、果肉は柔かで、なかなかの美味。ススは太くて短く、熟すと淡黄色になり、皮がうすく、口に入れると一種のミルクの感じがある。インドネシアではこれをつぶして幼児にたべさせるのでこの名がある。ススは乳の意味である。ラジャは最も普通につくられ、黄色に熟す。果肉は粗く、味はあまりよくない。スパトウは熟しても黄色にならず表面にぶつぶつがあり、形が短靴、あるいは中国人の木靴に似ているのでこの名がある。味は悪い。
  12. この他料理用のピサンがある。

  13. ナナス。パイナップルで、小形であるが味は割合によい。多くはつくられていない。
  14. マンガ。マンゴウで、かなり栽培しているが果実のうまいものはあまりなかった。
  15. パパヤ。パパイアで、普通に植えている果樹で、果肉の赤い品種もある。インドネシアの家で、果肉をすりつぶしてコップに盛りレモンと砂糖をかけてだされたが頗るうまかった。未熟のものは汁の実や肉の煮込に使われる。
  16. ナンカ・プランダ。トゲバンレイシ(バンレイシ科)で、よく熟した果実は美味である。酸味が多いので好まぬ人もある。カナカはシャシャップと呼んでいる。
  17. ピナン。ビンロウ(ヤシ科)で、未熟な果実を割って石灰をまぶし、キンマの葉と一緒に噛む。一種の清涼剤である。
  18. ビリンビン。ゴレンシとナガバノゴレンシ(カタバミ科)である。果実は酸味が多く美味とはいえない。
薬用、香料、有毒植物
  1. ラギア。パパヤの樹液で、腹痛に内服する。
  2. ラグディ。ニンジンボク属(クマツヅラ科)の一種の樹液で、腹痛のとき腹部に塗布する。
  3. ゴロ。ウオクサギ属(クマツヅラ科)の一種の樹液で、風邪で鼻のつまったとき鼻腔に入れる。
  4. フォイルビス。アカギモドキ(ムクロジ科)の樹液で、打ち傷に塗る。
  5. ニンゴア。ヤエヤマアオキ(アカネ科)の葉で、火にあぶり、腫物にはる。
  6. ルク。アルフィトニア属(クロウメモドキ科)の一種、樹液を繩や綱に塗ると丈夫になるという。
  7. なお、所属不明であるが次のようなものがある。グルは樹液を皮膚病に外用する。アジョルは葉をもみやはり皮膚病に用いる。メヌムパンは樹皮を煎じて喘息に内服する。ミニャクは樹液を頭髪に塗る。

  8. トバ。シマシラキ(トウダイグサ科)で、樹液を魚毒とする。ふつう南方でトバというのはデリス根であるが、我々の調査した地域では違うものを指すようである。
  9. ラサマラ、またはチェソダナ。フリンデルシア属(ミカン科)の一種で、枯木、とくに根に強烈な香りがあり、香木として用いられる。チェンダナはふつうビャクダン(白檀)をいうが、現住民がラサマラ、チェンダナというのを比較してみたが同じものであった。材が堅いので、小器具材としても珍重される。
  10. モソイ。クスモドキ属(クスノキ科)の一種で、樹皮からユーゲノールを主成分とする香料がとれるので、以前は重要な輸出品の一つであった。

以上のほか、生活に関係のある植物を材料にしたものを二、三記す。

  1. 楽器。笛と太鼓がある。笛は竹製で、指穴が六個あり、音階も割合正しく出るようになっている。ウィンデシという村に行った時、子供らが集まって竹笛の合奏をしてくれたが、三オクターブもある三種の笛を使って見事なものであった。
  2. 太鼓は、木をくり抜いた長い杵形のもので、一端にトカゲの皮を張ったもの。左手で腰に支え、右手で打つ。

    竹琴。竹の一節を切り、穴をあけてその側に表皮を細くはいだものを弦とし、これに穴をふさぐように弁をつけたもの。木の棒で弦をうつと竹筒が共鳴箱となって音が出る。

    口琴。竹を細く三又状に削り、一方に糸がついている。これを横にして糸を右手に持ち、両側の先端を左手に持って口にあて、糸をはじくと中央のものが震動し口腔を共鳴箱として音を出す。

    竹弓。小さな竹の弓で、ただ弦をはじいて音を出す。

  3. 狩猟具。銃を持たぬので、弓矢、わな、魚叉が狩猟具である。弓はビンローの材、弦は籐である。弦をはずしたときは弓は真直になる。矢はヨシに似たイネ科の一種の稈で、羽はない。矢じりは、ふつうはビンロー、タイヘイヨウテツボクの材で、まるく、先きが次第に尖り、浅い逆刺がついているか、竹製で扁平なものである。矢と矢じりはあまり固くついていない。とくに竹製のものは矢じりがすぐこわれるので、取換えができるように予備のものをもって歩く。極楽鳥をとるには、棍棒状の矢じりを使い、鳥の体を傷つけず気絶させるようになっているという。 わな。山豚と塚つくり鳥をとるのを見たが、前者は弓矢をしかけたもの、後者は足に綱が巻きつくようになっていた。 魚叉。魚を突くもので、ビンローまたはテツボク類の材でつくった数本の鋭利な棒を竹竿の先につけたものである。
  4. 火器。パプア人はマッチを持たぬので、一種の火おこし器を持っている。ガリスと称し、径三センチメートルくらいの竹筒にホクチを入れたものである。火をおこすときは、瀬戸物のかけらにホクチを添え、竹の表面に打ちつけると、出た火花がホクチに引火して火になる。ホクチの原料はニボンヤシの葉柄にある毛茸であるが、どうしてホクチに加工するか不明である。
  5. 玩具。ミエイで子供がボールを蹴って遊んでいた。見るとタコノキの類の葉で編んだまりであった。新しいうちは葉の弾力ではずむのである。 クーリーの一人がつくった玩具にカラガラがある。竹トンボ(但し、木でつくったもの)の柄をテリハボクの種子に通し、柄に糸を巻きつけて引張るのである。

―― 昭和十九年五月、一年前のニューギニアを偲びつつ記す。

(南洋経済研究・一九四四年七月)

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