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西イリアン記・余話

六月のはじめ、学習院大学探険部の学生H君が面会にきた。学習院、早稲田、明治大学の混成学生調査団が西イリアン地域で、味覚、感覚、嗜好形態を主とする社会学的、人類学的調査を行うため十月に出発するので、私から当時(昭和十八年)の事情をきいたり、顧問にもなっていただきたいというのである。どうして私のことを知ったかときくと、「先生は学習院の先輩であり、先生の著書『西イリアン記』にでているH通信員は僕の父です」という話であった。

この頃、西イリアンの植物標本を整理しているところで、偶然の符合におどろいた。この植物標本は、私が昭和十八年、占領後の蘭領ニューギニアにおける資源調査隊に参加して採集したものである。標本は一部を同定したままで敗戦から戦後の混乱、文献不足などで放置されていた。たまたま一昨年東京で開催された太平洋学術会議に出席したファン・ステーニス博士(オランダ・ライデンのリジクスヘルバリュウム館長)が是非研究したいというので、これら標本を同博士に送り、専門家の同定を得て昨春返送されたものである。

これらの標本を見ていると、当時の調査の状況や人間関係、原住民との接触のことなどそれからそれと思いだす。資源調査隊は六個班からなり、私の第三班は鳥頭半島の頸にあたる地区で林産、農産、鉱産資源の調査を担当し、専門調査員八名、測量員、通信員、連絡員各二名、医療、通訳、報道各一名から編成されたが、マノクワリ出発直前に、ヤムール地峡の測量調査という特別任務を海軍から負わされ、測量員四名、警備兵六名が追加され、第三班の基地ワオブに集結したときは人夫としてのパプア原住民とともに一四〇名の大部隊になった。班長としていろいろの苦労をしたが、通信員の一人がH君のお父さんだったのである。

彼はまだ二十代の元気一ぱいの若者で、測量隊についてヤムール地峡の中央部にあるヤムール湖まで踏査し、基地との無電連絡に従事した。なかなかの毒舌家で、世の中に先生ほどインチキなものはないと、小学校から大学の先生までこき下し、夕食後の無聊を慰められたことを思い出すのである。

数年前、私は当時の調査記録を「西イリアン記」と題して還暦記念に出版した。第三班の関係者に進呈しようと考え、週間新潮の掲示板をかりたが、H君のお父さんとは連絡がつかなかった。昨年の秋、彼が突然訪ねてくれたが留守で会えなかったが、早速電話をし、手紙を書き、西イリアン記を送って旧交を温めた。当時の青年が年をへた今日、どのように年輪を重ねたか、まだ見る機会がない。しかし、目前の息子のH君を見ていると、顔だちやまなざしが二十五年前の父親が彷彿としてくる。昔父親の行ったところへ息子が調査にでかけるという。親子の血縁を思わざるを得ない。

若い人達がまじめな調査をすることは国内国外をとわず大賛成である。顧問になること推薦状をかくことを快諾した。現在の私には物質的な援助はできないが、まだ残っている「西イリアン記」三〇部を提供することにした。これで寄付集めの運動費ぐらいにはなるだろうというわけだ。その後リーダーのI君と数回やってきたが、I君は一九六五年六月から一年半ばかりラテンアメリカ産業調査隊長としての経験もあり、二五〇頁の報告書も書いているしっかり者だ。ニューギニア調査も大いに期待できると思う。

海外へ研究調査にでかける機会が多くなった。しかし悩みはその費用である。国立機関のものなら国の科学研究補助金の補助をうけることもできるが「雀の涙」である。私立関係機関や学生たちは全額自己負担である。したがって寄付金を募ることになる。寄付者はいい顔はしない。政治は膨大な献金によって動いているのに、学術的研究調査は全く動きがとれない始末である。何とかならないものであろうか。

(教育美術・一九六八年十月)

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