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秋の花

秋の花といえば我々年輩者は月並に秋の七草を思いだします。「萩が花尾花葛花撫子の花女郎花また藤袴朝顔の花」最後の朝顔の花はキキョウだとかムクゲだとかいろいろ説がありますが、ハギ、ススキ、クズ、カワラナデシコ、オミナエシ、フジバカマであることは御存知の通りです。

しかし、今の若い人にはあまりピンとこないでしょう。昔のように家をでるとそこらにこれらの草が見られるというならともかく、舗装道路のわきにあるものがアメリカアリタソウ、アオゲイトウ、アオビユ、ブタクサ、などの帰化植物では七草もないものです。私が浦和に住みはじめた昭和十一年ころはまだ武蔵野の片鱗が残っていて、家を一歩でるとハギ、マキエハギ、オミナエシ、ワレモコウなどいくらでも見られたものです。それが、戦争末期から雑木林が掘り起されていも畑になり、疎開者の家が増加するようになると、よほど遠くへ行かなければお月見の材料にさえことかくようになりました。このあいだ仲秋の名月の日に、近所の花屋で穂の黒ずんだススキを売っているのには驚きました。人力による自然の破壊がいかにはげしいかはっきり見た次第です。

いつでしたかある新聞社が現代の秋の七草を企画して、「ハゲイトウ、コスモス、ヒガンバナ、イヌタデ、シュウカイドウ、キク、オシロイバナ」がその選に入ったことがあります。この選択は私としてはあまり賛成ではありませんが、それではおまえは何を選ぶかと問われても当惑してしまいます。

キクは栽培のイエギクを指しているようですが、野生のリュウノウギクやノジギクなら好きです。イヌタデはまあまあというところ、シュウカイドウは傑作ですが、どこでもあるというほどポピュラーではない。ヒガンバナは美しいには美しいが何かしら騒がしく、むしろキッネノカミソリを採りたいがこれもあまり一般的ではありません。二年ばかり前の春、秩父の武甲山麓で葉ののびだしたキツネノカミソリを掘って帰り植えておいたら、今年の九月に花が咲きました。よく見るとオオキツネノカミソリなんです。全くキツネに化かされた気持でしたが、この方が珍らしいので喜んだものです。オシロイバナはどうもいただけないし、コスモスは人が喜ぶほど好きになれないんです。ハゲイトウはその強烈な色彩は小気味がよいが、他とあまりにもかけはなれています。

秋の花といわれている植物には暦の上のものが多いようで、ハギ、クズ、カワラナデシコなどは盛夏の七月末から咲きだします。ですから我々がほんとに秋を感ずる八月末から十月末まで咲くものが秋の花といいたいところですが、そうすると割合に花の咲くものは少ないようです。

庭園につくられるコスモス、ダーリア、ジニア、キンモクセイ、ギンモクセイなども秋の花としてそれぞれ趣があります。しかし私は野生の花が好きです。やはり「野におけレンゲソウ」で、草花はその自然にはえている所で見るに限ると思います。鉢や庭に植えたものはどうしても囲い者の感じです。盆栽はその極端なものでいかにも不自然です。何故か。もともと植物は単独で生活しているものではない。同じ仲間が集まって群落をつくり他の仲間の群落とその土地にすみ分けて一種の社会生活をしているものです。その環境に適応して手足をのばしてのびのびと生きています。

それが庭や鉢に植えられると、仲間から隔離され、全く違った環境に孤立することになり、周囲の環視をうけ、気ままな自由を奪われたことになる。まるで借りてきた「猫」になってしまいます。たいへん擬人的な話になりましたが、原産地から移植した植物がもとと全くちがった形態になることはよく経験することです。この意味で私は、栽培が下手であるという意味も多分にあって、野草をその生育地で見るのが好きです。この九月、妙義山に行きましたが、コトジソウ、ツリガネニンジン、セキヤノアキチョウジ、モミジハグマ、マツカゼソウ、ツルニンジン、ダイモンジソウ、ヤクシソウなどが花盛りで、日陰、日向、岩上、水際などそれぞれの所に落ちついている姿は何ともいえない自然の美しさでした。

今、ツワブキが咲きだしました。庭石の側に植えられているところはつくりものの感じですが、昨年秋、伊豆大島に行ったとき、外輪山で見たツワブキは葉の直径二〇センチメートルあまり、花序の高さ二メートル近い壮大なもので、環境の相違というものをはっきり知らされた思いでした。

秋は花もよいと思いますが、紅葉、黄葉も花におとらず、いやむしろこの方が秋の植物の代表かもしれません。紅(黄)葉は何といっても中部以北の山岳地帯が一番です。ついさき頃蔵王山に登りましたが、地蔵岳の頂上付近、オオシラビソの黒と、ハウチワカエデ、ナナカマドの赤、ミネカエデの黄が市松模模のように美しかったのに目をみはりました。カメラを引きだしたとたんに霧がかかり、一枚も撮影できなかったのは今でも残念でたまりません。―― 十月二十一日 記

(読書春秋・一九五八年十一月)

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