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日本のウスユキソウの仲間たち

学名の意味はライオンの足

ウスユキソウの仲間は、キク科に属し、Leontopodiumレオントポディウムという属にまとめられています。これはライオンの足という意味のラテン語で、英名のLion's footも、仏名のPied de lionもそれからきているのですが、独名のEdel weissは気高い(品位ある高貴な)白色という意味であり、和名のウスユキソウは薄く雪を被っている草としています。英名と仏名はいかにも即物的ですが、独名と和名ははるかに文学的であるといえそうです。

ウスユキソウ属の共通性

それはともかく、ウスユキソウ属Leontopodiumは、キク科のなかではかなり特徴的で、なれれば、一見してそれとわかる形態をもっています。世界に約五十種、日本に五種産するといわれています。日本産のものを主としてその共通的性質をあげるとつぎのようになります。

多年草で、茎や葉に毛の多いのが普通です。茎は花をつけるものとつけないものがあります。花をつける茎は高さ50cm以下です。根出葉ははじめはありますが、花をもつ茎では開花のころになくなるものがあります。茎につく葉は互生し、披針形、狭長楕円形、線状披針形、へら形などで、縁に鋸歯がなく、先はとがるものもありとがらないものもあり、下部は細くなり、基部は鞘になって茎を抱くもの、鞘にならないものなど、いろいろです。葉の上面は毛のないもの、綿毛がうすくしくものなどがありますが、下面はふつう綿毛が密にはえています。花期になると、茎の頂に葉と多少違った形の苞が数枚から十数枚に密接して放射状にでます。この苞にはつねに白色または黄色をおびた綿毛が密生し、傘のように目立ちます。そしてその中心に数個の小型の頭花が密生しているので、全体が一個の大きな頭花のように見えます(これを傘と仮称する)。

頭花の総苞は半球形または鐘状球形で、総苞片が三列に並んでいます。総苞片は長楕円形で長さ3~4mm、縁部は褐色膜質でふつう不斉に浅裂し、背面に綿毛が密生しています。小花は管状花で、雌花と両性花の別があり、両性花は、雌花の周囲にあります。雌花の花冠は細くて長さ2~3mm、両性花の花冠はやや太く、先が多少漏斗状にふくらみ、雌花冠より少し長いのがふつうです。以上がウスユキソウ属の主な特色です。

雌花の子房はりっぱに実って実そう果になりますが、両性花の子房もそう果の形にはなりますが実らず、大きさも実そう果の二分の一~三分の一くらいしかありません。実そう果は長楕円形で、長さ1~1.6mmで、表面に微小な柱状突起があります(エゾウスユキソウ、コマウスユキソウにはありません)。

この突起は、大井博士や北村博士の本では乳頭突起といっていますが、先が丸くないので、柱状突起というほうがよいでしょう。

冠毛は白色で、長さ3~3.5mm、基部は環状に合着してそう果の頂端についています。冠毛は細い針形で全体に微小な刺がありますが、先端の形が雌花と両性花では少し違っています。雌花の実そう果の冠毛の先は針先のように鋭く尖っていますが、両性花の不実そう果の冠毛の先は、棍棒状のふくらみ(程度はいろいろ)になっており、北村博士は、これを「少し肥厚する」と記載しています。

この原稿を書くために、二十~三十倍の顕微鏡で確かめて見たところ、このふくらみに見えるものはじつは、冠毛を作っている細胞が乳頭状に突出して集まったものと判りました。

見分けるのは茎の高さ、開花期の根出葉、茎葉、葉の基部等々……

さて、日本にはウスユキソウ、ミヤマウスユキソウ、コマウスユキソウ、ハヤチネウスユキソウ、エゾウスユキソウの五種が自生しています。それを見分ける要点は、花をつける茎の高さ、開花期に根出葉があるかないか、茎につく葉の形と大きさ、葉の基部が鞘になるかどうか、傘の大きさ、頭花の数、実そう果に柱状突起があるかないかなどで、種の検索はつぎの通りです。

  • 花をつける茎は、高さ30〜60cmで、多数の葉がつく。葉は披針形ないし長楕円形で、基部は鞘にならない。根出葉ははじめあるが開花期には枯れる。傘は花茎の頂に一個つくが、ふつうはさらに数個の小さい傘にわかれる。実そう果に柱状突起がある。〔ウスユキソウ〕
  • 花をつける茎は高さ16~20cmで、少数の葉がつく。葉は線形または狭倒披針形である。別に花をつけない短い茎があり、その先に根出葉がロゼット状につく。
  • 茎葉の基部はやや細くなり、鞘になって茎を抱く。
  • 茎葉は線形で、幅3mm以下である。
  • 花をつける茎は高さ6~15cm、頭花は四~十個、実そう果に柱状突起がある。〔ミヤマウスユキソウ〕
  • 花をつける茎は高さ4~7cm、頭花は二〜三個、実そう果に柱状突起がない。〔コマウスユキソウ〕
  • 茎葉は線状披針形で、幅4〜6mm、実そう果に柱状突起がある。〔ハヤチネウスユキソウ〕
  • 茎葉の基部は細くなり、鞘にならない。したがって茎を抱かない。実そう果に柱状突起がない。〔エゾウスユキソウ〕

実そう果の性質を重視すると検索はつぎのようになります。

  • 実そう果に柱状突起がある。
  • 花茎は高さ30〜60cm、茎葉は多数で基部は鞘にならない。〔ウスユキソウ〕
  • 花茎は高さ20cm以下、茎葉は少数で、基部は鞘になる。
  • 茎葉は線形で幅3mm以下、総苞片は長さ約3mm、実そう果は長さ約1.2mm。〔ミヤマウスユキソウ〕
  • 茎葉は線状披針形で幅4〜6mm、総苞片は長さ約4mm、実そう果は長さ約1.6mm。〔ハヤチネウスユキソウ〕
  • 実そう果に柱状突起がない。
  • 花茎は高さ4~7cm、茎葉は基部が鞘になる。頭花は二~三個。〔コマウスユキソウ〕
  • 花茎は高さ14~33cm、茎葉は基部が鞘にならない。〔エゾウスユキソウ〕
日本のウスユキソウいろいろ

ウスユキソウ(薄雪草)L. japonicum Miq.

山地から亜高山帯にはえる多年草で、茎は高さ30~60cm、多数の葉が互生します。葉は披針形または狭長楕円形で長さ4~6.5cm、幅5~15mm、先は鋭形、基部は狭くなり鞘にはなりません。上面は緑色で、毛はないか、うすい綿毛があるが、下面は灰白色の綿毛がはえています。根出葉ははじめあるが、花期には枯れてしまいます。夏から秋に、茎の頂にある数個の葉の腋に短い小枝がでてその先に傘がつきます。傘には黄白色の綿毛が密生しており、その中央に数個の頭花が集まっています。頭花の総苞は鐘状球形で長さ4.5mm、三列の総苞片があります。実そう果は長楕円形で長さ約1mm、柱状突起があり、冠毛は長さ約3.5mmです。

北海道、本州にふつう見られ、中国まで分布しています。生育地により、茎の高さ、葉形など変異があります。

ミネウスユキソウ(峰薄雪草)var. shiroumense Nakai

ウスユキソウの高山型とされています。高さ10cm内外、葉は小さく、頭花は少数です。本州の高山(北アルプス、南アルプス、八ヶ岳など)に見られます。

カワラウスユキソウ(川原薄雪草)var. perniveum Kitamura

茎がやや硬く、葉は長さ2cm内外、幅約5mmで白色綿毛が密生するものです。南アルプス仙丈岳の北側にある石灰岩地で採集されたものに本田博士が新種として発表したものですが、北村博士が変種に格下げしました。

コウスユキソウ(小薄雪草)var. spathulatum Murata

茎は群生し、高さ10~15cm、葉は密に互生し、へら型で長さ16~17mm、幅4~5mmのもの。大峰山、四国の赤石山、東赤石山、石鎚山、手箱山に分布しています。

ここでちょっと横道にはいりますが、種の中の変わりものを、変種と見るか、品種と見るかは、研究者の見解の相違によるものです。以上のべた三変種は、大井博士はみな品種と考えています。もし、本質的な性質の相違がわかれば、カワラウスユキソウもコウスユキソウも、最初の命名者が考えたように、それぞれ、L. perniveum Honda, L. spathulatum Kitamuraの独立権を認めることになるかもわかりません。

ミヤマウスユキソウ(深山薄雪草)L. fauriei Hand.-Mazz

ヒナウスユキソウ(雛薄雪草)ともいわれます。花をつける茎と、つけない茎とがあり、花をつけない茎は短く、先に根出葉がロゼット状につきます。この葉は線状披針形で先が尖がり、長さ2.5~6cm。

花をつける茎は高さ6~15cmで、これにつく葉は線形で長さ1.5~3cm、幅2〜3mm、基部は鞘になり、両面に白色または黄灰白色の綿毛が密生しています。七~八月、茎の頂に、径2.5~5cmの傘がつき、八~十三個の苞に白色の綿毛が密生して目立ちます。

頭花は四~十個、総苞は球形で長さ4mm内外です。実そう果は長楕円形で長さ1.2mm、柱状突起がよくはえています。冠毛は長さ約2.5mm。

産地は、本州の東北地方の日本海側の高山、秋田駒ヶ岳、鳥海山、月山、朝日岳、飯豊山などに限られているのは興味あることです。

この学名については、古くはヨーロッパアルプスの名花エーデルワイスL. alpinum Cass.そのものと考えられたり、その亜種または変種とされたりしました。今ではハンデル・マゼッティの日本特産種とするのが定説です。学名の種小名は、明治時代に日本で植物採集をした宣教師のフォーリーU. Faurieの名を記念したものです。ミヤマウスユキソウに似ているが、全草が繊弱で、葉が細く、幅2mmにみたないものが至仏山や谷川岳に生えています。ホソバヒナウスユキソウ(細葉雛薄雪草)L. fauriei var. angustifolium Hara et Kitamuraと名付けられています。

コマウスユキソウ(駒薄雪草)L. shinanense Kitamura

花をつけない茎は短く、葉は倒披針形で長さ8~20mm、幅2~4mm、下面にとくに白綿毛が多い。花をつける茎は高さ4~7cm、葉はへら形または倒披針形で長さ14~20mm、幅2.5~3mm、先はまるく、基部は鞘になり、下面に白綿毛が密生する。傘は径2~3cm、苞は六~九個で、上部の葉とともに、黄色をおびた白綿毛が密生して美しい。苞は披針形で長さ7~15mm、幅3mm内外、中心に二~三個の頭花がつきます。総苞は球形で長さ約4~5mm、実そう果は長楕円形で長さ1.5mm、柱状突起がないのが特徴です。冠毛は長さ約3mm。

長野県の西駒ヶ岳(木曽駒ヶ岳)にしか産しないのでこの名があり、この仲間では一番小型で愛らしいのでヒメウスユキソウ(姫薄雪草)ともいわれます。昔はエーデルワイスと同種とされたり、ミヤマウスユキソウと考えられたこともありましたが、今は西駒ヶ岳特産の独立種と認められています。

ハヤチネウスユキソウ(早池峰薄雪草)L. hayachinense Hara et Kitamura

岩手県早池峰山だけに稀産するのでこの名があり、珍重されています。花をつけない茎は短く、葉は線状披針形で長さ3~8cm、幅3~5mm、先は尖り、下面に綿毛が多い。

花をつける茎は高さ10~20cm、葉は披針形で長さ3~5cm、幅4~6mm、基部は鞘になり、根出葉は花期にも残っています。傘は径4~6cm、苞は五~十五個、長楕円状披針形で長さ7~30mm、その中心に四~八個の頭花が集まっています。

傘にも上方の葉にも白色綿毛が密生するので際立って目を引きます。総苞は球形で長さ約5mm、総苞片は長楕円形で長さ約4mm、背面に白綿毛が密生、実そう果は長楕円形で長さ約1.5mm内外、柱状突起があります。冠毛は長さ約3.5mm。古くはエーデルワイスの変種と考えられたり、エゾウスユキソウと同種、またはその変種とされたりしたが、今は独立種として落着いています。

北海道、後志国、大平山にオオヒラウスユキソウvar. miyabeanum S.Watanabeというハヤチネウスユキソウの変種が産します。葉は茎に密につき、幅がより広く、花冠の下部にも毛があるので区別できるといわれています。実そう果に柱状突起がない点はエゾウスユキソウにも似ているので、さらに研究を要します。

エゾウスユキソウ(蝦夷薄雪草)L. discolor Beauv.

茎は群生し、はう根茎があります。花をつけない茎の葉は舌状線形で長さ4~8cm、幅5~7mm、基部は柄になります。花をつける茎は高さ14~33cm、葉は舌状披針形で長さ3~6cm、幅5~8mm、基部は柄になり、鞘にはならず、無花茎の葉と同様に下面に白綿毛が密生します。傘は径3~5cm、苞は九~十八個、狭長楕円形で長さ1〜3cm、白綿毛が密生し、その中心に五~二十個の頭花が集まり、ときに頭花に短い柄のあるものもあります。総苞は球形で長さ4mm、総苞片は長楕円形で長さ約3.5mm、背面に綿毛が密生しています。実そう果は長楕円形で長さ約1mm、柱状突起はなく、冠毛は長さ約3mm。北海道から樺太に分布し、レブンウスユキソウともいわれます。

以上のほか、検索表にはでていませんが、南千島(色丹島、エトロフ島)にチシマウスユキソウ(千島薄雪草)L. kurilense Takedaがあることになっています。花をつけない茎の葉は線状披針形で長さ2.5~4cm、幅4~6mm、花をつける茎は高さ10~22cm、葉は広線形ないし線状披針形で長さ2.5~4cm、幅4~6mm、基部は鞘になり、無花茎の葉とともに白綿毛が両面に密生しています。傘は径3~5cm、苞は九~十八個で倒披針形または狭長楕円形で長さ7~20mm、先は丸みをおび、白色綿毛が密生します。頭花は七~九個、総苞は球形で長さ約4mm、実そう果は長楕円形で長さ約1.5mm、柱状突起が密生しています。冠毛は長さ約3.5mm、実そう果の性質はハヤチネウスユキソウに似ていますが、苞の形が違い、先が丸みをおびています。この仲間を産地別に見ると、ハヤチネウスユキソウは早池峰山に、コマウスユキソウは西駒ヶ岳に、ミヤマウスユキソウは東北地方の日本海側の高山に、エゾウスユキソウは北海道から樺太に、チシマウスユキソウは南千島に、ウスユキソウは本州、九州から中国に分布していることになります。

タカネウスユキソウ(高峰薄雪草)という高山植物があって、本州と北海道の高山で見られます。全草に白色綿毛が多く、高さ10~20cmで、何となくウスユキソウの仲間に似ていますが、葉の基部は茎に延下し、頭花の集まりの基部に苞がなく、頭花の総苞は大きく、長さ9~10mm、総苞片は五~七列にならび、先が褐紅色をおび、冠毛の基部は環状に合着しないので、ヤマハハコ属Anaphalisに入れられ、A. alpicola Makinoの学名をもっているので、タカネヤハズハハコというべきものです。

(ガーデンライフ・一九七九年五月)

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