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日本の植物

日本の国土は狭い割合に複雑な地勢、気候や環境をもつため、そこに生育する植物は花の咲く植物だけでも数千種あるといわれる。これらの植物がどのような広がりをもっているかは、植物地理学または生態学から研究されているが、ここではごく常識的に一般向きにあらましを説明することにしたい。

日本の顕花植物は、質的にいえば、世界種、北半球に広く分布する種、ユーラシア大陸に共通する種、東亜・北米に共通する種、日本国有種などをふくむが、もっとも多くの属や種を共有するのは、ヒマラヤ、中国、朝鮮、ウスリーを含む地域で、日華植物区系といわれる。現在、顕花植物の種類は世界に約20万種といわれ、日華植物区系にはその約20%、日本にはその約10%、4,000種が自生するといわれる。

垂直分布

垂直分布は、植物が高さに応じて種類が変ってくる。つまり植相がちがってくることである。本州中部を例にとると、垂直分布は0~500m、500~1,500m、1,500~2,500m、2,500m以上の四帯に分けられ、それぞれ下方から丘陵帯、低山帯、亜高山帯、高山帯と呼ばれる。またそれぞれの帯に分布する代表的な樹木をとってクリ帯、ブナ帯、シラビソ帯、ハイマツ帯と呼ぶこともある。この高さの範囲は一応の基準であって、だいたい500m、1,500m、2,500mの前後に境界があるということで、東北地方や北海道ではさがり、関西から四国、九州ではあがる。

丘陵帯――丘陵帯の下部、海岸近くではシイノキ、タブノキ、ヤブツバキ、常緑のカシ類、アオキ、ヤマモモ、モッコク、トベラなどの常緑広葉樹、いわゆる暖帯の樹種が多い。この暖帯林は本州の西南部から四国、九州では1,000m近くまであるが、関東以北では少なくなり、北海道ではなくなる。

海岸または海辺の植物は南部も北部も気候がよく似ており、海流の関係もあって分布の広い植物が多い。ハマエンドウ、ハマヒルガオは日本各地からアジア、ヨーロッパ大陸、北太平洋諸島に広く分布し、本州、北海道、朝鮮、オホーツク海沿岸、北太平洋にはセンダイハギ、ハマハコベがある。ハマゴウ、ハマボッスは日本から朝鮮、中国、東南アジア、太平洋諸島に、イワタイゲキ、ハマナタマメは本州以西、沖縄、台湾に、ボタンボウフウはフィリピンまで分布している。日本に固有のものも多少ある。ハマアザミは本州、四国、九州にあるが、イソギクは本州の関東地方、ハマギクは東北地方の太平洋岸にだけ分布している。

丘陵帯の大部分にはクヌギ、コナラ、ハンノキ、エノキ、アカメガシワ、クリ、アカシデなどが多い。

低山帯――低山帯は500~1,000mであるが、南と北では高度にかなり差があることはいうまでもない。下部にはアセビ、ソヨゴ、イヌツゲ、ヤマグルマ、常緑のカシ類がまじるが、上部になるにつれて落葉樹が多くなり本州の大部分はこれにはいる。

ブナ、ミズナラ、ホウノキ、トチノキ、シナノキ、イタヤカエデ、ハリギリ、ヤマハンノキ、カツラ、シラカンバなどの落葉樹、ヒメモチ、ツルシキミ、エソユズリハ、ツルマサキなどの常緑低木、アザミの類、ハギの類、ツツジの類などがある。日本の植物の大部分はこの低山帯に入り、ここにある林を温帯林という。

亜高山帯――低山帯から亜高山帯に移行するにつれて、コメツガ、シラビソ、ヒメコマツ、トウヒ、ウラジロモミなどの針葉樹があらわれ、落葉樹がしだいに少なくなる。さらに上部になると、いままでのカエデの類に代ってオガラバナ、ミネカエデがあらわれ、シラカンバの代りにダケカンバが、カツラの代りにヒロハカツラが、ハンノキ、ヤマハンノキの代りにヤハズハンノキやミヤマハンノキ、ナナカマドの代りにウラジロナナカマドがあらわれてくる。

この低山帯から亜高山帯に移行する範囲にもっとも植物数が多く見られ、日本の特産属または準特産属が出現している。それは、コウヤマキ、アスナロ、ヤワタソウ、ウラハグサ、レンゲショウマ、ギンバイソウ、ホツツジ、トガクシショウマ、シラネアオイ、キレンゲショウマなどの諸属で、特産種にいたってはここにあげきれないほど多数である。

亜高山の上限になると、高木の丈が低くなって高木限界になる。それ以上は、わずかにハイマツ、タカネナナカマド、ミネヤナギその他の矮小低木しか生育しない高山帯になるのである。

高山帯――高山帯は、本州中部では2,500m以上であるが、近畿地方や四国になるとほとんど見られない。また東北地方では2,000m前後に下がり、北海道では1,500m以下になる。高山帯は、日本ではハイマツを標徴種とするのでハイマツ帯ともいわれる。一年草はほとんどなく、多年草または見かけ上草のような矮小低木ばかりである。特産属はオゼソウ属だけで、ほとんどがカムチャッカ、アリュウシャン、アラスカ、シベリア、北アメリカ、北ヨーロッパと共通属である。

この高山帯には湿潤地、乾燥地、岩地などに、それぞれ適した場所を選んで多くの高山植物がすみ分けている。多年草としては、ウサギギク、タカネヨモギ、タカネニガナ、ミヤマタンポポ、イワギキョウ、ムシトリスミレ、ミヤマシオガマ、ヨツバシオガマ、ミヤマクワガタ、ミヤマリンドウ、ミヤマウイキョウ、タカネスミレ、ハクサンフウロ、ミヤマキンバイ、アラシグサ、イワベンケイ、コマクサ、ハクサンイチゲ、ミヤマオダマキ、シナノキンバイ、ミヤマキンポウゲ、タカネナデシコ、ムカゴトラノオ、ハクサンチドリ、クルマユリ、クロユリなど。矮小低木には、リンネソウ、ツガザクラ、コメバツガザクラ、イワヒゲ、ミネズオウ、キバナシャクナゲ、クロマメノキ、コケモモ、イワウメ、ガンコウラン、イワオウギ、チングルマ、チョウノスケソウ、タカネイバラなどがある。

高度による垂直分布と、気候による水平分布の関係は、丘陵帯は暖帯~温帯下部に、低山帯は温帯に、亜高山帯は亜寒帯に、高山帯は寒帯に相当することになるが、全く同じではない。気温の相違などで見かけ上似ているにすぎない。真の寒帯は日本にはない。

各地別の植物相のあらまし

日本の植物を、北海道区、北陸区、関東区、本州中部山岳区、西部区の大まかに五地区に分ける見方がある(原寛氏による)。それによってあらましを述べることにする。

北海道区――この地区は、夏はおだやかであるが短く、冬は厳しくて長い。無霜期は150日以下である。エゾマツ、アカエゾマツ、アカトドマツの森林があり、オヒョウニレ、ミズナラ、キタコブシ、ウダイカンバ、ハルニレ、シュウリザクラ、オオバボダイジュ、オオヤマザクラ、カシワ、カラコギカエデなどの落葉樹が分布し、大形の草本には、オニシモツケ、ヨブスマソウ、ハンゴンソウ、オオイタドリ、エゾニュウなどがある。湿原にはヤマドリゼンマイ、ヌマガヤ、エゾゼンテイカ、ヒオウギアヤメ、タチギボウシなど、海岸にはハマナス、ハイネズ、センダイハギ、ハマエンドウ、スナビキソウ、ハマヒルガオ、シロヨモギ、テンキグサ、ハマイなどがはえる。

原生花園は、花期に海岸植物と湿原植物が一斉に開花して雄大な美観を呈するので名物になっており、中央部の大雪山、夕張岳、日高山脈は北極要素が多く、本州の高山と共通種も多い。特産種もかなり多く、大雪山にはミヤマヤチヤナギ、エゾマメヤナギ、ジンヨウキスミレ、ホソバウルップソウ、ダイセツヒゴタイ、夕張岳にはユウバリコザクラ、シソバキスミレ、ユウバリリンドウ、ユウバリソウ、ユキバヒゴタイ、日高山脈にはヒダカミネヤナギ、ヒダカイワザクラ、ヒダカミヤマノエンドウ、ヒダカソウ、ヒダカトウヒレン、アポイカンバ、アポイゼキショウなどがある。

西北海上にある利尻島や礼文島は小さな島であるが植物の種類が多く、リシリゲンゲ、リシリヒナゲシ、リシリソウ、リシリトウウチソウ、ベニシオガマ、レブンソウ、レブンイワレンゲなど特殊な種類が知られている。

北陸区――本州の東北部から新潟、富山、石川、福井県にわたる地区である。年50日以上の降雪があり、無霜日は160~180日、十二月から三月までの積雪量は他地区より遙に多い。丘陵帯にはクリ、コナラ、ケヤキ、ムラサキシキブ、ヤマモミジ、ガマズミ、コゴメウツギなどがあり、海岸植物は北海道と大差はない。暖帯林はわずかに見られるが、日本海岸では対馬暖流の影響でタブノキとヤブツバキが青森県まで分布している。

低山帯にはブナ、ミズナラ、ウワミズザクラ、ホウノキ、マルバマンサク、ノリウツギ、リョウブ、エゾユズリハ、サワグルミ、タニウツギ、オオバクロモジなどがある。本州中部の山岳にくらべて低山帯と亜高山帯があまりはっきりせず、低山帯の上部はオオシラビソ、コメツガ、トウヒ、クロベなどの針葉樹にオガラバナ、ミネカエデ、ミネザクラ、アカミノイヌツゲ、ムラサキヤシオ、ハクサンシャクナゲなどが混じり、1,500~2,000m前後で高山帯になる。高層湿原のある所にはツルコケモモ、ヒメシャクナゲ、ウメバチソウ、モウセンゴケ、ミズギク、ヌマガヤ、キンコウカ、イワショウブ、ワタスゲ、ゼンテイカ、ミツガシワなどがはえている。

高木限界にはダケカンバ、ミヤマハンノキ、ミネザクラ、タカネナナカマドなどがあり、高山帯には北海道の高山や本州の中部山岳と共通するものが多いが、中部山岳とやや異なる特殊な種類も見られる。岩木山のミチノクコザクラ、早池峰山のハヤチネウスユキソウ、ナンブトラノオ、ナンブイヌナズナ(夕張岳にもある)、ヒメコザクラ、鳥海山のチョウカイアザミ、チョウカイフスマ(雌阿寒岳と共通)、など注意すべきもの、月山はエゾノツガザクラの南限、吾妻山はイソツツジとヒナザクラの南限、シラビソの北限などは分布上興味をひくものである。

白山はこの地区の西端にある高山で、北方系植物の西南限になるものが多い。例えば、イワギキョウ、ミヤマシオガマ、ハクサンオオバコ、ハクサンコザクラ、トウヤクリンドウ、キバナシャクナゲ、カライトソウ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、アラシグサ、ムカゴトラノオ、ハクサンチドリ、キヌガサソウなどである。

関東区――北陸の南部に当る所で、関東地方から山梨、神奈川、静岡、愛知県にわたる地域(中部山岳区を除く)である。年降水量1,000~2,000mm、年平均気温10~15度で丘陵帯の大部分は耕作地として人手が加わり、低山帯も自然林は少なく、ほとんど二次林になっている。海岸にはハマエンドウ、ハマボッス、ハマニガナ、ハマゴウ、ハマヒルガオ、ハマボウ、ハマハタザオ、ハマグルマ、ハマツメクサ、イソギク、ワダン、イワタイゲキ、コウボウムギ、ケカモノハシ、ハイネズなどがあり、その内部にはタブノキ、シイノキ、アカガシ、シラカシ、モチノキ、シロダモ、ヤブニッケイなどの常緑広葉樹がある。丘陵帯にはコナラ、クヌギ、クリ、ケヤキ、エノキ、エゴノキ、ハンノキ、ミズキ、ガマズミ、ムラサキシキブ、ヤマツツジ、ヤマブキ、ミツバツツジなどの高木や低木、ジュウニヒトエ、タチッボスミレ、ノコンギク、ニリンソウ、ウツボグサ、ワレモコウ、ツリガネニンジン、シュンラン、エビネ、カタクリその他の多種の草が繁茂している。沼沢地には、マコモ、ツルヨシ、ヨシ、ノハナショウブ、ヒツジグサ、ジュンサイ、ヒシ、ガガブタなどが見られる。

低山帯には、ブナ、ミズナラ、サワシバ、シナノキ、チドリノキ、ウリハダカエデ、アオハダ、オオカメノキ、サルナシ、マタタビなどの木本、ヤグルマソウ、クサアジサイ、ジャコウソウ、サラシナショウマ、ユキザサ、シロバナエンレイソウ、イワウチワ、セツブンソウ、ギンバイソウ、ハシリドコロなどの草木がある。亜高山帯になるとシラビソ、コメツガ、クロベなどの針葉樹があらわれる。これらの典型的な植物は、秩父連山、日光火山群でよく見ることができる。

この関東区で特異なものは、富士箱根火山群とその延長の伊豆七島であろう。富士山は比較的新しい火山なので高山植物の種類は貧弱であるが独立峰であるために垂直分布の観察には適している。この富士山、箱根山、丹沢山、愛鷹山、伊豆の山地には他とややちがう植物が見られ、これを富士箱根要素といっている。ハコネコメツツジ、サンショウバラ、タテヤマギク、コイワザクラ、ハコネグミ、アシタカツツジ、ハンカイシオガマ、マメザクラ、フジイバラ、フジアザミ、ヒメスミレサイシン、ヒトツバショウマ、イワユキノシタ、ハコネシロカネソウなどがこれである。

伊豆七島は海岸気候の影響で南方系の植物、タマシダ、オオタニワタリ、リュウビンタイ、ヘゴ、スジヒトツバなどのシダ類、オサラン、ナギラン、ナゴラン、ヒメトケンラン、ガンゼキランなどのラン類があり、特有種と認められるハチジョウシュスラン、ハチジョウツレサギ、ハチジョウコゴメグサ、ハチジョウテンナンショウ、ハチジョウショウマ、イズノシマホシクサ、シマホタルブクロ、シマナガバヤブマオなどがある。

本州中部山岳区――北陸区と関東区の中間にあって、3,000m級の高山が集まっている所で、低山帯は関東区と同様である。亜高山帯は1,500~2,000mまであり、山脈によりまた方向によって多少の型があることはいうまでもない。

針葉樹はシラビソ、オオシラビソ、コメツガ、トウヒ、ウラジロモミ、クロベ、ヒメコマツなどで、落葉広葉樹にはネコシデ、オオバカツラ、ヤハズハンノキ、ミヤマハンノキ、オオカメノキ、ミヤマシグレ、ミネカエデなどがある。下草にはハリブキ、センジュガンピ、ツバメオモト、カニコウモリ、タケシマラン、オサバグサ、ゴゼンタチバナ、シラネアオイ、ミツバオウレン、モミジカラマツ、ヒロハユキザサ、シュロソウなどがはえ、湿潤な草原にはキンコウカ、ゼンテイカ、コバイケイソウ、イワイチョウなどが群落をつくっている。

高木限界付近にはダケカンバ、オガラバナ、ウラジロナナカマド、ミネザクラ、オオヒョウタンボク、ハクサンシャクナゲ、オオバスノキなどがあってその上部はハイマツの高山帯になる。高山帯の適湿な斜面にはハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、ハクサンフウロ、オヤマリンドウ、タカネヨモギ、チングルマ、アオノツガザクラなどが、乾いた砂礫地にはガンコウラン、クロマメノキ、コメバツガザクラ、ツガザクラ、キバナシャクナゲ、イワツメクサ、イワギキョウ、チシマギキョウ、ミヤマムラサキ、イワキンバイ、イワウメ、チョウノスケソウなどがはえている。この中部山岳区には、A.北アルプス(飛騨山脈)、B.中央アルプス(木曽山脈)、C.南アルプス(赤石山脈)とすこしはずれてD.八ヶ岳山彙があり、日本の高山植物はここに集まった感があるほど種類が豊富である。この四山脈に共通する種類はきわめて多いが、多少ちがう傾向もある。A、B、C、Dの代表をそれぞれ白馬岳、木曽駒ヶ岳、北岳、八ヶ岳としてくらべてみると次のようなことがわかる。A、C、DにあるがBにないものはタカネコウリンカ、シロウマオウギ、シロウマナズナ。AとCにはあるがBとDにはないものはミヤマハナシノブ、ミヤマムラサキ、シロウマリンドウ、シロウマアカバナ、ハゴロモグサ。AとDにはあるがBとCにないものがウルップソウとツクモグサ。BとCにあるがAとDにないものがハハコヨモギ。B、C、DにあるがAにはないものはセリバシオガマである。

またA、B、C、Dそれぞれに特産としてAにタカネセンブリ、Bにコマウスユキソウ、Cにキタダケソウ、キタダケヨモギ、キタダケトリカブト、キタダケキンポウゲ、Dにヒナリンドウ、ヤツガダケキンポウゲがある。

西部区――紀伊半島、中国地方、四国、九州をふくむ地区で、東日本とはだいぶ趣を異にしている。太平洋岸の丘陵帯は上部まで暖帯林がはいり込み、常緑広葉樹が多い。モミ、ツガ、トガサワラ、ヒノキ、コウヤマキの混じる低山帯が1,500m以上の高さまで上っている。従って紀伊半島の中央部にある大峰山(1,915m)では1,700mくらいまで亜高山帯のウラジロモミ、トウヒ、シラビソの森林があり、中部山岳のような高山帯は見られない。しかし、四国の剣山や石鎚山は2,000mにみたないが、タカネイバラ、ミヤマウイキョウ、ムシトリスミレ、ツガザクラ、ミヤマダイコンソウ、ハクサンイチゲなどの高山植物があるのは興味がふかい。

本州中部の南部から紀伊半島の南部、四国、南九州にかけて連続した分布を示す植物がある。

ハリモミ、ヤチマタイカリソウ、キレンゲショウマ、センダイソウ、シノノメソウ、テバコモミジガサなどで、そはやき(襲速紀)要素といわれる。

中国地方の北側、山陰地方は北陸区の延長で、北方系のハマナス、ハマハコベ、エゾオオバコ、ナミキソウなどの西限、南方系のグンバイヒルガオ、ハマビシなどの北限といわれている。

中国山脈の南側、山陰地方は朝鮮と共通種が知られる。イワシデ、コバノチョウセンエノキ、チトセカズラ、チョウジガマズミ、イワツクパネウツギ、ホクチアザミなどこれである。

四国の北側と瀬戸内海をかこむ地方には関西系の植物が多い。モチツツジ、ヤブウツギ、ビロウドイチゴ、ミカエリソウ、ウラジロウツギ、コツクバネウツギ、アキチョウジなど。

九州の北部にはイワシデ、コバノチョウセンエノキ、カラムラサキツツジ、エイシュウカズラ、オオペニウツギ、ダルマギク、ノヒメユリなど満鮮系の植物があり、山陽地方に似ている。そして本州にはまだ報告のないツクシヤブウツギ、ノヤナギ、ツクシガシワ、バイカイカリソウ、クロフネサイシン、ヒメウラシマソウなどがある。

南部、とくに大隅半島の海岸近くには、亜熱帯性の植物、例えばヘゴ、オオタニワタリ、ソテツ、ビロウ、コウチニッケイ、ヘツカニガキ、ヘツカリンドウ、ヤッコソウが見られ、川内川、大淀川には他に見られないカワゴケソウ科の数種が報告されている。

中央部には九住山、祖母山、阿蘇山、霧島山がありいずれも1,800m以下で、上部までカヤ、ツガ、ハリモミ、モミ、ヒメコマツ、アスナロなどを混じえた温帯落葉樹があり、本州に見られるような亜高山帯はないといってよい。しかし屋久島の最高峰宮之浦岳(1,935m)には高木限界のような所があり、小規模の湿原もあり、山頂付近は高山帯らしい景観を示している。屋久島を南限とする植物が多く、例えば、ツガ、モミ、アカマツ、リョウブ、ナツツバキ、ホツツジ、クサヤツデ、ウバユリ、ノギラン、シライトソウなどがある。屋久島は特産種の多いことも特徴で、屋久島の名を冠するものに、ヤクシマリンドウ、ヤクシマシオガマ、ヤクシマシャクナゲ、ヤクシマサルスベリ、ヤクシマショウマ、ヤクシマムグラ、ヤクシマママコナ、ヤクシマヒヨドリ、ヤクシマシュスラン、ヤクシマラン、ヤクシマノガリヤス、ヤクシマホシクサなどがある。

特殊地域に分布する植物

気候や垂直分布とあまり関係ないが、ある特殊地域に分布する植物がある。蛇紋岩地域と石灰岩地域がよい例である。前地域には、オゼソウ、ヒメコザクラ、カトウハコベ、ナンブイヌナズナ、ユウバリソウなど、後地域には、イチョウシダ、クロガネシダ、イワヤクシソウ、ヒメシャジンなどがある。

日本の植物と大陸との関連

日本に自生する植物のうちで他大陸と関連あるものについて簡単に述べる。特産種を除けば、すべて他の大陸と何らかの関連をもつわけである。

中国大陸とはもっとも密接な関連にあり、例をあげるにいとまがないほどである。次に関連の深いのは北半球に広く分布する共通種で、温帯性の植物にはレンプクソウ、ハッカ、ミツガシワ、ヤナギトラノオ、キツリフネ、ワレモコウ、ヤマブキショウマ、ハタザオ、モウセンゴケ、イヌナズナ、ギョウジャニンニク、ヤマスズメノヒエ、ワタスゲなど。

また亜寒帯から寒帯性の植物にはウラシマツツジ、ヤチツツジ、ミネズオウ、ヒメシャクナゲ、クロマメノキ、コケモモ、ガンコウラン、ヤナギラン、タテヤマキンバイ、ホロムイイチゴ、チョウノスケソウ、ツマトリソウ、キタミソウ、ムシトリスミレ、コシカギク、マルバギシギシ、ムカゴトラノオ、チシマアマナなどがある。

ヨーロッパには分布しないが、東亜から北アメリカと共通するものがかなり知られ、カヤ、ツガ、モミジカラマツ、ルイヨウボタン、サンカヨウ、アラシグサ、マンサク、フッキソウ、リョウブ、イワカガミ、イワナシ、ヨウラクツツジ、ハエドクソウ、ノブキなどの属がある。

アジア熱帯に共通して分布するものに、ヒヨドリジョウゴ、クマツヅラ、グンバイヒルガオ、ノアサガオ、サクララン、シソクサ、ウリクサ、フタバムグラ、ヌマダイコン、イズハハコ、トキンソウ、ツボクサ、コミカソソウ、タヌキマメ、ミソナオシなどがある。

世界種といわれる植物がある。世界至る所に見られるもので、おそらく古い時代に人類の移動につれて自然にひろがったものと推定され、ノゲシ、イヌホウズキ、ナズナ、ミチヤナギ、ハコべ、トウダイグサ、スズメノカタビラ、エノコログサ、スベリヒユ、シロザ、タガラシ、スズメノエンドウ、メヒシバ、オナモミなどがこれである。

帰化植物

ある植物が、本来の自生地から他の地域に直接間接に人力の影響によりもたらされ、そこで野生化して繁殖し、もしその歴史を知らなければその地域在来の自生種のように定着したものがある。これを帰化植物という。わが国に於ける帰化植物は明治初年、外国との交通が開けてから急に多くなった。ふつうは輸入物資に種子が混ざってくるので、はじめは、横浜や神戸のような港に見出され、そこから各地に広がった。戦後は航空機の発達により、空港付近に出現して広がるケースも多くなった。一時的に帰化しても風土に適しないものは消失するが、定着しても外部への広がりのおそいものもあれば、短日月に急速に広がって繁殖するものもある。

日本における帰化植物の種類はどのくらいあるか。だいたい500種といわれる。科別に見ると、キク科がもっとも多く約20%、次がイネ科で約15%、マメ科が約8%、アブラナ科が約7%、ナデシコ科が約4%となっている。帰化植物の原産地を見ると、明治大正時代はヨーロッパが多かったが、戦後は北アメリカのものが多くなった。国と国との交通関係の深浅が如実に現れているのは興味が深い。

(写真集 日本の花・一九七二年七月)

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