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第六話 特殊な植物園

植物関係で旧知の人のひとりに、室井綽氏という方がいる。生物の高等教育に携わる一方、タケ・ササを生涯の研究対象とし、愛好家のための「日本竹笹の会」を作り、その普及と研究に力を尽くしている。1956年、氏の長年の念願がかなって、「富士竹類植物園」が誕生した。

富士山を背景にした園内には、日本のタケ・ササのほかに、熱帯産のバンブー類も集められていて、合計300種あまりがある。稈に黄金色の縦縞のあるキンメイモウソウチク、節間が膨れて布袋様の腹を思わせるホテイチク、稈が亀の甲羅を思わせるキッコウチクなどの珍奇なタケ類もあり、野生と栽培のタケ・ササだけを集めた特異な植物園である。

このタケ園のような、ひとつの植物群だけを集めた植物園にはいろいろあり、その代表格がバラ園で、世界各地に見られる。

千葉県習志野市にある京成バラ園は、その八千代農場で新品種の育成を行っていることで知られるが、研究熱心な学者で園長の鈴木省三氏のもとで、多くの原種が集められてい る。鈴木氏の作出したバラは、バラ園芸のメッカであるフランスのバラのショーで賞を得ている。

大阪・枚方市にある、ひらかたパークのバラ園も有名だが、ここはまた、新宿御苑とともに、キクのコレクションで世界的に知られている。

このタケ園やバラ園、さらに薬草園のように、ひとつの植物群、あるいは、ひとつのカテゴリーに属する植物だけを集めた植物園を、私は「特殊植物園」とよぶ。総合植物園を総合大学にたとえれば、特殊植物園は単科大学に相当する。

アメリカで盛んなアジアの樹木研究

特殊植物園のなかで規模の大きなものに、樹木園(アーボリータム)がある。はじめはフランスで造られたが、今では世界各地に見られる。

優秀な樹木園として挙げたいものに、米国のハーバード大学付属アーノルド樹木園がある。107万平方メートル余りの敷地内にアジア産の樹種を中心に6,000種あまりがあり、アジアの植物の腊葉(押し葉)標本を誇るハーバード大学の植物標本館とともに、日本では資料不足のためにできない日華区系の植物研究に大変役立っている。これらの樹木の収集は、サクラの研究で知られ、園長であったウィルソン博士や、世界的な樹木学者で園長であったレーダー博士の努力に負うところが大きい。

米国には、このほかワシントン市にアメリカ国立樹木園がある。敷地面積は180万平方メートルと広く、総数7,600種の樹木があり、とくに日本のサクラ類をはじめとして、ツツジ、シャクナゲ、モチノキ、ニレ、カシ、モクレン、ムクゲ、リンゴ、サルスベリ類などがよく揃󠄀っている。つい数年前まで園長であったクリーチ(John L. Creech)博士は、第二次大戦後六回にわたり、日本を中心とした東アジアの植物探索を行い、この樹木園を中心とする米国の、アジア植物のコレクションを築いた功労者である。

一般的には、樹木園は木本を中心に集めた植物園であり、植物園は草本木本共に集めた植物園、と云う様な解釈が流布しているようだ。結果的にはそうかも知れないが、以下のように樹木園と植物園を区別する方が良い。

樹木園とはその樹木園が存在する地域の環境で生育する植物を集めている一方、植物園はその地域の環境では育ち難いか育たない、その地域では珍しい植物にも重点を置いて集める。故に、樹木園は展示温室を持たない。

日本の温帯に樹木園を造れば、日本、中国等の温帯アジアの植物に加えて、ヨーロッパや北米の温帯の植物も日本の温帯の環境で育つから導入栽培が出来る。例えば、ブナ属では日本のブナの他にアメリカの葉の大きいアメリカブナやヨーロッパブナも共に植えられる。一方、植物園プロパーには温室が目玉として存在し、ヤシ類、オオオニバスなどの熱帯植物とか、多くのラン類、中米のサボテン類などを見せたりする他、暖かい間だけ屋外の花壇に出し、冬を中心に温室に保護するような草本や潅木も集めたりする。

したがって、樹木園も植物園も、草と木の両方を集めるが、樹木園は屋外で大形に育った樹木の収集に適し、植物園プロパーでは人工環境下で育つ草本や潅木類も多く集められる、ということになる。だから、都市緑化植物園は樹木園であり、そこの環境条件で生育し得る国内外の植物を都市緑化用植物を中心に導入する。

球根植物で知られるキューケンホーフ

どちらかといえば地味な存在である樹木園に対して、派手で絢爛たる植物園が園芸植物園である。その代表に、米国のロングウッド・ガーデン(Longwood Gardens)がある。

この植物園は、フィラデルフィア市の南西約30キロのケンネット・スクエアにあり、有名な化学会社系のデュポン財団が造ったものである。噴水のある大庭園と中世風の大温室があり、各種の園芸植物を集めている。チューリップやテッポウユリが素晴らしいイースター・フラワーショーをはじめとし、各種のフラワーショーが催される。付属の園芸学校も有名で、海外からの留学生も多い。

ヨーロッパの園芸植物園のなかでは、オランダのハールレム近郊にあるキューケンホーフ球根園(Keukenhof)が挙げられる。チューリップの品種が多いが、ほかにムスカリ、スイセン、ヒアシンス、フリージア、アイリス類などの球根性の花卉が植栽されており、春から初夏にかけて、26万平方メートルの園内いっぱいに花の咲く様子は見事で、一見に値する。

日本や中国に多い単科の植物園に、薬用植物園がある。大半は、製薬会社や大学の薬学科の付属研究機関となっており、その性格上一般に公開されていないケースが多い。

しかし、岐阜県羽島郡川島町にある、エーザイ株式会社の内藤記念くすり博物館と付属薬用植物園は、一般公開されている。中国産や日本産のほかに、熱帯産の薬用植物や、新しい甘味料植物として注目されているステビアなどの工業用植物を含め、300種あまりがある。博物館には、漢方ならざる日本の和方の薬学の歴史をたどる資料も展示されている。

文学的情緒のあるものとして、奈良の春日大社万葉植物園がある。「万葉集」に現れる植物300種あまりが、池に沿った道端に植えてある。

特殊植物園のテーマは、このほかに、高山植物園、多肉植物園、ラン園、ツバキ園、農業植物園などとさまざまであるが、海藻類を集めて見せる水族館式の植物園は、まだ造られていないようだ。

『植物園の話』コンテンツ一覧▼ 目次(青字)をクリックすると、各文をご覧いただけます

本書まえがき

第一話ニューヨーク植物園
第二話古代エジプトに逆上る歴史
第三話温室は華麗なシンボル
第四話もうひとつの顔・・・・・・花壇と並木
第五話さまざまな「ガーデンズ」
第六話特殊な植物園
第七話ニューヨーク植物園の四季
第八話植物園の舞台裏
第九話植物園と大学
第十話植物を集める
第十一話植物を保存する
第十二話植物の情報ストック
第十三話植物園での植物研究
第十四話社会生活とのつながり
第十五話教育的な役割
第十六話憩いの場として
第十七話娯楽に公開されるケース
第十八話両陛下をお迎えして
第十九話菊人形と菊花展―第二回目の特別行事
第二十話ニューヨーク植物園のゲストブック
第二十一話ヨーロッパの植物園
第二十二話アジアの植物園
第二十三話北アメリカの植物園
第二十四話中・南米の植物園
第二十五話オセアニアとアフリカ
第二十六話植物園の在りかた

本書あとがき

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